IBMの科学者らは、先端が一酸化炭素分子からなる原子スケールで鋭利な金属製の器具を用いることにより、分子の内部構造の画像を取得することに成功した。色付けされた表面は、実験データを表している。その下にあるモデルは、分子内の原子の位置を示す(提供:IBM)
IBMの科学者らは、先端が一酸化炭素分子からなる原子スケールで鋭利な金属製の器具を用いることにより、分子の内部構造の画像を取得することに成功した。色付けされた表面は、実験データを表している。その下にあるモデルは、分子内の原子の位置を示す(提供:IBM)
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 IBMの科学者らは,個別分子の化学的構造を画像化した。これにより,原子や分子スケールの電子的なビルディングブロックが構築される可能性が高まった。

 IBMは米国時間8月27日,スイスのチューリッヒの科学者らが初めて,個別分子の「解剖模型」,つまり化学的構造を,非接触型の原子間力顕微鏡(AFM)を用いて,「これまでにない」解像度で画像化したと発表した。1945年から研究開発プログラムを実施している同社によると,分子内の個々の原子を分析することは,表面顕微鏡における長年の目標であったという。

 同研究は,今日のプロセッサやメモリーデバイスと比べて格段に小さく,高速で,エネルギー効率の高い,原子スケールの演算要素の構築において重要となると,IBMは述べた。

 同研究は,雑誌「サイエンス」の8月28日号で報告されている。

 IBMによると,AFMを用いた原子スケールのナノ構造に関する研究の近年の進歩にもかかわらず,原子解像度での分子全体の化学的構造の画像化はこれまで実現されていなかったという。

 原子間力顕微鏡を,超高真空かつ極低温(5ケルビンとは,摂氏マイナス268度,華氏マイナス451度に相当する)の環境において使用し,個々のペンタセン分子の化学的構造を画像化したという。ペンタセンは,有機半導体のような属性を与える結晶構造を持つ。

 科学者らは,「初めて,電子雲の向こうに,個別分子の原子バックボーンを観測すること」ができた。大ざっぱに言えば,軟部組織を貫通して,骨の明瞭な画像を提供するX線に似ている,とIBMは述べた。

 雑誌サイエンスへの掲載は,6月12日号の記事「determination of atomic charge states(原子における電荷状態の測定)」に続き,2カ月間で2度目となった。両記事で論じられた研究成果は,「電荷が分子間,または分子ネットワーク上を伝播する方法に関する研究において,新しい可能性を切り開く」とIBMは述べた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ