データセンターへのハウジングの相談から始まった商談。詳細を詰めるうちにサーバー統合案件に発展した。顧客の要望を叶える技術者がいない。メーカーの技術者が協力し、受注につなげた。

=文中敬称略


 「Hyper-VもiSCSIも、詳しい技術者が社内にいない。このままでは受注できないかもしれない」。グローバルネットコアのネットワーク事業部営業担当主任の富樫正樹は、焦っていた。

 富樫が担当していたのは、空調や給排水、衛生設備の設計や施工を手掛ける、ナカムラのサーバー統合案件だ。ナカムラの従来の基幹系システムは、10年近く稼働しており、老朽化が進んでいた。サーバーのなかには、保守サポートの期間が切れていたものもあったという。

 サーバー統合の対象は、6台のWindowsサーバーだ。会計などの基幹システムとCADの設計データ管理システムやバックアップ用途、NT4.0のドメインコントローラなどで構成していた。

地震をきっかけに商談開始

 富樫がナカムラの経営管理部課長の皆川浩一から相談を受け始めたのは2007年後半のことだ。きっかけは、2007年7月に発生した新潟県中越沖地震である。

 ナカムラのサーバー自体は被害を免れたものの、「不幸中の幸いだっただけ。もう一度、地震が来た時に大丈夫だという保証はない」と皆川は感じていた。

 というのもこの時点で、いずれのサーバーも、ナカムラの本社の一室に設置していただけだったからだ。サーバーのなかには、通路に置いてあるものまであったという。しかも、特別な耐震設備などを施していなかった。

 中越沖地震の後、何らかの対策を取ろうと考えていたが、ナカムラの情報システム担当者は皆川一人だけ。「ほかに優先すべき案件が山積みだった」(皆川)ため、地震対策は後手に回っていた。

 なかなか地震対策が進まない現状に、ナカムラの社長である田中弼は皆川にこう命じた。「いつまた大きな地震が来るかもしれない。早く安心できるデータセンターへのアウトソーシングを優先してほしい」。

 そこで皆川は、データセンター事業を手掛け、もともと付き合いのあったグローバルネットコアの富樫に相談を持ちかける。これまでの付き合いから、富樫は確実に受注できるだろうと想定し、商談を進めていた。



本記事は日経ソリューションビジネス2009年8月30日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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