Googleが,「Linux」向けの64ビット版「Google Chrome」の開発に着手した。Linux愛用者らは歓喜の渦に包まれることだろう。

 ChromeのエンジニアであるDean McNamee氏は米国時間8月20日,メーリングリストのメッセージにおいて,「V8チームは今四半期の間に,正常動作する64ビット移植版の構築という素晴らしい作業を成し遂げた。『Chromium』側に少し変更を加え,この数週間で64ビットのChromium Linuxを構築した」と述べた。

 「V8」とは,ウェブ上で一般的に使用されるJavaScriptで記述されたプログラムを実行するためのChromeのエンジンである。Chromiumとは,Googleが支援する同社ブランドのブラウザであるChromeの背景にあるオープンソースプロジェクトであり,McNamee氏は,プログラマらに対し64ビットChromiumを構築するための手順を説明している。

 今日,多くのPCに,IntelやAdvanced Micro Devices(AMD)製の64ビットプロセッサが搭載されているが,デスクトップコンピューティングの分野では,32ビットのOSとソフトウェアが一般的である。64ビットソフトウェアへの移行は,特にLinuxと「Mac OS X」において着々と進行しているが,容易な作業ではない。例えばブラウザの世界では,Adobe Systemsの「Flash」,Microsoftの「Silverlight」,Sun Microsystemsの「Java」などの32ビットプラグインとともに64ビットブラウザを稼働すると問題が生じる可能性がある。

 64ビット版においては,プログラムはより大容量のメモリを利用することができ,プロセッサ上のレジスタと呼ばれるストレージ空間の増加によって性能を向上させることができ,一部の大規模算術演算の実行を高速化することができる。しかしプラグインとの互換性がないなどの問題に加えて,64ビットソフトウェアは,さらなるディスク空間を消費し,プログラマによるテストやサポート作業を複雑にし,しかも,それに見合うだけの高速化が得られない場合が多いため,64ビットへの移行の優先度は必ずしも高くない。

 例えばMac OS Xは,すでに64ビットへの移行をほぼ完了しているが,64ビット版「Safari」は,まもなく発売予定のMac OS X 10.6(Snow Leopard)まで登場しない。ちなみにAppleは,64ビット版のSafariではJavaScriptの実行がさらに高速になると述べている。

 しかし,人数は少ないものの,高度な技術を理解し,プログラミングを愛するLinux愛用者らは,64ビットソフトウェアを歓迎するだろう。Linux向けの64ビット版「Flash Player」をリリースするようにAdobeに強く求めていた彼らは,今度は,64ビットブラウザを強く要求している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ