「利用プロセス」を考慮した開発プロセスへの転換
豆蔵 IT戦略支援事業部 チーフアナリスト 竹内政恵氏
豆蔵
IT戦略支援事業部
チーフアナリスト
竹内政恵氏

【講演概要】RIAの普及によって,情報システムのユーザビリティをより高められる可能性が出てきました。しかし,従来型の開発プロセスでは,ユーザビリティを考慮していないケースがほとんどです。この講演では,ユーザービリティを考慮した開発プロセスへの転換を提案します。

  • 9月15日(火)17:10-17:55 B会場
  • 担当記者による紹介記事

     ユーザー・インタフェース(UI)の操作性や表現力を高めるRIA(Rich Internet Application)。ここにきて適用事例も続々と登場してきた。ところが,プログラムの一部をクライアント側に持たせたり,タブやアニメーションといった立体的な部品を使うUIの設計には,従来のHTMLベースの設計とは違った難しさがある。そのため従来のUI設計のやり方をプロジェクトで適用し,検討漏れや手戻りが発生するケースも出てきている。

     この状況に対してRIAに詳しい豆蔵の竹内政恵氏(IT戦略支援事業部 チーフアナリスト)は「RIA時代に適したUI設計への転換が不可欠」と訴える。従来の開発プロセスでは「ユーザビリティをきちんと考慮していなかったり,GUIやレイアウトなど表層部に限定されたりする設計になっているのが問題。これでは,クライアント側のロジックや,適切な表現手段といったRIAで明らかにすべきモデルを定義できない」(竹内氏)という。

     では,RIA時代のUI設計とは何か。竹内氏は,ユーザビリティを重視した「利用プロセス」という考え方を取り込むアプローチを推奨する。上流工程では一般に,ユースケースをベースに業務プロセスを定義し,そこからUIをモデル化する。竹内氏が推奨するやり方は,ユースケースを業務プロセスとともに,利用プロセスというもう一つの観点でとらえる。具体的には,ユーザーが利用する場(すなわちRIA技術で構築されたUI)を「Use Space(ユーススペース)」としてとらえ,架空の顧客像(ペルソナ)単位で業務プロセスとの兼ね合いを明らかにしていくという。

     この講演では,そうしたRIA時代のユーザビリティ設計のエッセンスを竹内氏が披露する。竹内氏は大学卒業後,SIベンダーに入社。金融,運輸業界を中心に,複数のプロジェクトで基幹系システムの設計・開発をしてきた。2006年に豆蔵に入社し,製造業を中心とした内部統制構築支援および支払い業務改善コンサルティングに従事。現在は,ユーザビリティ・デザイン&プロセスの検討,ユーザビリティに関するコンソーシアムの立ち上げを手掛けている。

     竹内氏は「業務プロセスからとらえたユーザビリティではなく,業務プロセス駆動でありながら,ユーザーの利用プロセスを確実に捕捉できる上流工程に転換することが大事だ」と説明する。その方法論の実践こそが「ユーザーに使いやすく,ビジネスにとっても価値の高いシステムの実現につながる」と自信を見せる。