サンフランシスコ発--Googleは米国時間5月27日午前,次世代のウェブテクノロジについて開発者らの関心を惹きつけるべく,ウェブアプリケーションが将来的に,いかにデスクトップアプリケーションに近付いていくかということを示してみせた。

 Googleの最高経営責任者(CEO)であるEric Schmidt氏は,サンフランシスコで開催されている「Google I/O 2009」カンファレンスの冒頭で,「今こそ,われわれの目の前に広がっている素晴らしいチャンスをものにする時である」と語った。Schmidt氏はここで,未来のアプリケーション開発の基盤がコンピュータのOSではなく,インターネットとブラウザになるという確信が強くなってきていることについて述べている。

 とは言うものの,業界はまだその段階に到達していない。約4000人の開発者を前にデモンストレーションされたアプリケーションの多くは,「HTML 5」テクノロジの幅広い普及を必要としているものの,この規格はまだ,企業や組織で構成されるコンソーシアムによって策定中の段階なのである。

 それでも,Googleのエンジニアリング担当バイスプレジデントであるVic Gundotra氏によると,オープン標準を採用している現代的な4つのブラウザ(Firefox,Safari,Chrome,Opera)はいずれも,HTML 5テクノロジのうち,規格が確定したものから順次採用を進めることで,これら4つのブラウザに比べて標準化が遅れているMicrosoftのInternet Explorer(IE)に差を付けようとしているという。

 しかし,Gundotra氏は基調講演の後,HTML 5を推進していく作業は一筋縄ではいかないと指摘し,その理由がMicrosoftとの競合にあるのではなく,数多くの大企業がIEを使っており,IE向けに開発された企業アプリケーションが他のブラウザで稼働しない可能性があることにあると述べた。同氏は「HTML 5の策定が完了し,ブラウザがそれに準拠するようになれば,Webの進化に対して大きな影響を与えることになるだろう」と述べている。

 Gundotra氏は,Webアプリケーションがどのようにしてcanvas要素,video要素,ジオロケーション,アプリケーションキャッシュおよびデータベース,Web Workersという,HTML 5における5つの大きなコンセプトを利用できるようになるかを示してみせた。

 例えば,canvasタグによって,開発者はプラグインを使用しなくても,あらゆる種類の洗練されたグラフィックスをWebアプリケーションに組み込むことが可能になる。また,videoタグもプラグインを必要としないという利点を持っている。Googleは,videoタグを用いてYouTubeビデオの「実験」を行ってみせた。videoタグを用いることで,動画をWebページに埋め込む際の選択肢が広がることになるのである。

 また,ジオロケーションも,最近のモバイルアプリケーションにおける大きなトピックである。Googleは,「Google Latitude」アプリケーションが新しいiPhoneジオロケーションAPIをどのように利用するのかを示してみせた。なお,iPhoneジオロケーションAPIはAppleの「iPhone 3.0」ソフトウェアの一部としてリリースされる予定であり,モバイル版「Safari」ブラウザ上で実行される。また,Mozilla CorporationのJay Sullivan氏によって,Wi-Fiや携帯電話の基地局の位置情報を用いることで,Firefox 3.5のボタンから,ブラウザ内でユーザーの位置を特定し,Google Maps上で表示するというデモンストレーションが行われた。

 GoogleのエンジニアリングディレクターであるMatthew Papakipos氏は,基調講演後のセッションにおいて,Googleはさまざまな開発プロセスで,27日にデモンストレーションされたHTML 5の機能における各種の側面に取り組んでいると述べた。例えば,リッチなグラフィックスを可能にするcanvasタグは,リリース済みの「Chrome 2.0」に搭載されているが,videoタグといった他のものが世の中に出るにはまだ時間がかかるという。

 Mozillaは,27日にデモンストレーションされたHTML 5技術すべてのサポートを「Firefox 3.5」のリリースで計画している,とSullivan氏は述べた。同ブラウザのリリースは間近と予想されている。

 興味深い質問として(後日明らかになるのかもしれないが),Googleは,同社検索に関する取り組みとして,今後予想されるウェブアプリケーションの波をインデックス化する計画があるか,また,どのように計画しているのかというものがあった。これらリッチアプリケーションをインデックス化する試みは現在,アプリケーション内にあるコンテンツのカテゴライズ方法について理解を試みる検索ボットにとって,大きな課題となっている。

 「コンテンツは問題にならないだろうが,どのようにGmailをインデックス化するか?Gmailをインデックス化すべきか?」とGundotra氏は考え込んだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事をシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。 原文へ