写真1●携帯電話+ARでここまでできる<br>まさに持ち出し可能なバーチャル・フィギュア。ネットで流行る「ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)」のダンスを滑らかに踊る。初音ミクの下に映っている白黒の模様がマーカー。
写真1●携帯電話+ARでここまでできる
まさに持ち出し可能なバーチャル・フィギュア。ネットで流行る「ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)」のダンスを滑らかに踊る。初音ミクの下に映っている白黒の模様がマーカー。
[画像のクリックで拡大表示]

 拡張現実(AR=Augmented Reality)アプリケーションの端末として最も期待されるのは携帯電話。カメラやディスプレイ,通信回線,GPS(全地球測位システム)など必要な機能を全て備えるからだ。

 では,現在の携帯電話の性能でどの程度のARアプリケーションを作れるのか。ソフトウエア・エンジニアの飯塚 綾(りょう)氏が開発する「NyARToolkit」は携帯電話によるマーカー型ARの可能性を見せてくれる。NyARToolkitはARを実現するための定番C言語ライブラリ「ARToolKit」のJavaおよびC#版だ。最近はFlash版やAndroid版も登場している。特に携帯電話用に最適化されているわけではないが,「HTC Touch Diamond」で動くNyARToolkitのデモ・アプリケーションは滑らかにアニメーションしている(写真1)。

 飯塚氏は「ハードウエア的にはHTC Touch Diamondくらいの端末でマーカー型ARの実現に必要な性能に到達しつつある」という。同端末は動作周波数が528MHzの米クアルコム製CPUを採用する。さらに,クアルコムの「Snapdragon」のように動作周波数が1GHzを超える携帯電話用CPUが登場しているので,処理速度は今後も向上し続ける。「Wikitude」や「Enkin」,「セカイカメラ」など,マーカーを使わない位置情報に基づいた携帯電話のARが話題を呼んでいるが,CPU速度の向上でマーカー型も技術面では実用レベルに達しつつある。

 携帯電話のARで残る問題は倫理的な部分だ。「携帯電話のカメラをどこにでも向けることはまだ社会的に許されていないのではないか」(飯塚氏)。倫理的な問題が残る以上,盗撮防止のためにカメラを制御するAPI(Application Programming Interface)の利用には制限が残るだろう。ARの商業化が始まる中で,今後はこういった問題の議論が必要になっていく。