ユーザー企業がさまざまなITリソースをインターネット経由で活用するクラウドコンピューティング。「クライアント/サーバー型システムの登場に匹敵するほどのインパクトをもたらす」という見方が多い。迫りつつある変化の波をチャンスにすべく多くのソリューションプロバイダが、“クラウドビジネス ”に取り組み始めた。
クラウドコンピューティングのサービスといえば、当初はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)だけだった。だが、ここにきて、「PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」や「HaaS(ハードウエア・アズ・ア・サービス)」といった新たなサービスが登場している。
クラウドコンピューティングは、サーバーのリソースや業務アプリケーションのすべてを、インターネット経由で提供するサービス形態のこと。ユーザー企業は、Webブラウザを搭載した端末さえ用意すれば、システムを所有する必要はない。ソリューションプロバイダには、新しいビジネスを開拓する好機をもたらしそうだ。
SaaSから「PaaS」や「HaaS」に拡大
SaaSとしては、米セールスフォース・ドットコムのSaaS型CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)ソフト「Salesforce」が代表的だ。国内でも多くのソフトウエアメーカーが、自社製品をSaaSで提供し始めている。サイボウズのグループウエア「サイボウズOffice 7 for SaaS」やピー・シー・エーのSaaS型会計ソフト「PCA for SaaS」などがそうである。
これとは別に、認証や課金のシステム、開発環境など共通基盤をサービスとして提供するのがPaaSである。今のところPaaSはSaaSを動かすための基盤システム、つまりSaaSプラットフォームを指すケースが多い。PaaSとしては、セールスフォース・ドットコムの「Force.com」や米グーグルの「Google App Engine」がある。
まだ耳にすることの少ないHaaS。こちらは、サーバーやストレージなどのハードウエア資源をサービスとして提供する。従来のホスティングサービスと違うのは、仮想化技術をフル活用した仮想インフラを貸し出すことである。
米アマゾン・ドットコムの仮想マシン・サービス「Amazon EC2」がHaaSの代表例である。ユーザー企業は、サーバーやストレージの利用状況に応じて、料金を支払えばよい。ピーク時を見込んで、処理性能の高いハードを購入する必要がなくなる。
「世界中のITベンダーが本腰を入れ始めた。クラウドコンピューティングの潮流は本物だ。国内のITベンダーは、この分野でのビジネスに真剣に取り組まざるを得ないだろう」。ITサービスの動向に詳しいアクセンチュアの沼畑幸二システムインテグレーション&テクノロジー本部テクノロジーコンサルティング統括エグゼクティブ・パートナーは述べる。
本記事は日経ソリューションビジネス2008年10月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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