中国移動(チャイナモバイル)はAppleに対し,顧客を自社のネットワークにとどめるため,「iPhone」に修正を加えることを求めているのかもしれない。

 Appleとチャイナモバイルはこのところ,iPhoneの中国展開の可能性を探っている。South China Morning Postの報道によると(cellular-news経由),チャイナモバイルはAppleが中国にWi-Fiと3Gのチップを無効にしたiPhoneを出荷することを望んでいるという。なぜ高速通信のチップを使えなくするのかと,読者は疑問に思うかもしれない。

 その答えは競争だ。チャイナモバイルは中国独自の第3世代ネットワーク規格に基づく3Gネットワークを構築する計画で,これは広く使われているW-CDMAの規格とは互換性がない。チャイナモバイルのライバルである,中国電信(チャイナテレコム)はW-CDMAを採用すると見られている。

 報道によると,次のような事情がある。チャイナモバイルとしては,自分たちが3Gネットワーク網を完成させるよりも先に,W-CDMA規格に対応した「iPhone 3G」を自社の顧客に買ってほしくない。さもないと,顧客はチャイナモバイルのネットワークに縛られるよりも,購入したiPhoneをアンロックしてチャイナテレコムのネットワークで使うことを選ぶかもしれないからだ。アンロックされたiPhoneはすでに中国に広がっている。2008年になってからは,40万台以上が利用されているという推定もあり,この数字が縮小すると考える人はほとんどいない。

 3GとWi-Fiのチップを無効にするだけでよいのなら,修正版の出荷はAppleにとってそれほど難しいことではないかもしれない。まったく別のものを開発するのとは違うからだ。しかし,iPhoneとAppleの結びつきの強さを考えると,この変更によって遅いデータ通信を強いられた中国のiPhoneユーザーが,使い勝手が悪いとiPhoneを非難するようになる可能性がある。

 Appleにとって中国への展開は大きな魅力だろうが,本来の性能を欠いたiPhoneを出荷するほどの価値があるかどうかはわからない。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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