ソフトウエアビジネスが劇的に変化している。ソフトウエアベンダーは、製品自体の収入が減る中、サービスで顧客を囲い込もうと必死だ。ユーザー企業がソフトに大金を支払うことを嫌がる今、この傾向は止まりそうもない。(本誌)
ソフトウエアベンダーの伝統的な製品のライセンス収入が、減少している。現在の収入源は、パッチの提供や技術支援などのサービスに移った。この変化は米シーベルで顕著だ。
2005年に米オラクルがシーベルを買収する前、シーベルの製品販売の売り上げは激減していた。一方のオラクルでも、サービス収入が製品販売の売上高を越えた。10年前にオラクルは、サービス収入と製品販売の“十字交差”を経験したのだ。
オラクルとシーベルについて、ソフトウエアの販売量が減少したのか、製品価格が下がったのかは分からない。
いずれにせよ、サービスが製品販売の収入を上回った。保守サポートの売り上げはサービス収入に計上され、60%を占めるまでになっている。
サービスか製品販売かの選択を
ソフトウエアビジネスが複雑化している要因は、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)や“無償だが著作権のある(free, but not free)”ソフトウエアなど、新しいビジネスモデルが登場したことにある。
SaaSベンダーであるセールスフォース・ドットコムは、SaaSを製品による収入と見なし、本来のサービスとは区別して計上する。これがやっかいだ。SaaSのビジネスモデルは、伝統的な製品販売とサービスの収益とコストの区別を混乱させる。
SaaSのサービス料金では、技術支援料金を含めるが、通常のソフトウエアベンダーのサービス収入源となる保守サポート料金を除く。そのためSaaSではサービス収入が小さく見える2)。
SaaSの台頭などもあり、ソフトウエアベンダーは、製品販売よりもサービスに注力するか、従来のビジネスを継続するかの選択を迫られている。たいていソフトウエアベンダーは最初、製品のライセンス費から収入の大部分を得る。それが時間の経過とともに、製品とサービスに変わり、最終的にはサービス主体のビジネスに移行していく。
ソフトウエアベンダーが、製品販売から利益を得る機会を失っているからだ。多くのソフトウエアベンダーはライバルの出現で、新規顧客の獲得に苦労したり、製品のプライスダウンを迫られたりしている。
さらに、グーグルやヤフーなどは、検索や電子メールなどの基本的なデスクトップ・アプリケーションを事実上、無料で提供している。これらのソフトウエアベンダーは広告主から多くの収入を得ているのだ。
本記事は日経ソリューションビジネス2008年4月15日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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