Appleは,バッテリ寿命に対する懸念が原因で高速版iPhoneのリリースを延期したにも関わらず,IntelのSilverthorneチップの採用でまた一歩後退するつもりなのだろうか。

 Apple関連の情報サイトAppleInsiderが米国時間12月21日に伝えたところによると,Appleは,Intelが間もなく発売する低消費電力チップ「Silverthorne」を「現在,同社の2008年版製品ロードマップに記載されている製品,それも1つではなく複数の製品に」使用することを決定したという。Silverthorneは,Intelがハンドヘルド,携帯電話市場を支配すべく,Mobile Internet Deviceと呼ばれる製品コンセプトの一環として発売する最新の製品だ。

 また同レポートによると,Silverthorneが搭載される可能性が最も高いのは,3G対応iPhoneとAppleInsiderが先に報じたNewtonに似たタブレット型コンピュータだという。しかし,Silverthorneに関するこれまでの情報を踏まえると,サブタブレットPCに搭載されるという噂にはうなずけるが,iPhoneに搭載される可能性は低いと思われる。

 Intelは,2月に開催されるInternational Solid State Circuits ConferenceでSilverthorneに関する詳細情報を発表する予定だ。しかし,事前のプログラムやIntelが過去1年間に行ったSilverthorneに関する発表の内容からすでに分かっていることは,Silverthorneの消費電力が,2004年にリリースされた同チップよりもはるかに小型のPentium Mと同程度になりそうだという点だ。現在Intelが販売しているノートPC用Core 2 Duoプロセッサの消費電力は35ワットであるのに対し,Pentium Mの消費電力はわずか1?2ワット程度だ。

 しかし,それだけ電力消費を抑えても電話用としてはまだ不十分だ。いくつかのiPhoneの分解結果によると,AppleはSamsung S3C6400か,iPhone用に特別に開発したS3C6400と同等の製品を使用している可能性が高い。S3C6400は,ARM1176コアを基礎とし,動作速度620MHzの消費電力はわずか279ミリワットだ。しかし,それは全力で使用している場合の消費電力で,通常の消費電力はそれよりもはるかに低い。一方,Silverthorneの最低消費電力は500ミリワットだ。恐らく,この消費電力で済むのは同チップがアイドルモードで何もしていない場合に限られる。

 しかし仮に,消費電力に対する懸念があまりに大きいがために,Appleは3G対応iPhoneのモデムの消費電力が低下するまで,同製品のリリースを延期したという話が真実であれば,279ミリワットや500ミリワットの消費電力でも,携帯電話,特にApple製の携帯電話にとってはまだ大きすぎる。しかし,以前話題になった噂の「Return of the Newton」などの強力なハンドヘルドのような製品であれば,この程度の消費電力でも十分有効だろう。しかし,IntelがSilverthorne時代の端末として過去1年間に発表してきたコンセプトデザインを考えると,Return of the Newtonは,Ultra-Mobile PC(UMPC)やソニーのPlayStation Portable(PSP)といった携帯型ゲーム機のような,携帯電話よりもはるかに大型の機器のようだ。

 Appleの最高経営責任者(CEO)であるSteve Jobs氏とIntelのCEOであるPaul Otellini氏の緊密な関係に加え,Otellini氏が低電力設計に傾倒していることを考えれば,AppleとIntelが将来の携帯電話やモバイルコンピュータの分野で協力したとしても全く不思議はない。しかし,少なくとも,2009年まではそれはないと考えている。Intelは2009年にMoorestownと呼ばれるチップをリリースすることを計画している。このMoorestownチップの動作電力は,現在のARMアーキテクチャと同じミリワット単位になると見られている。IntelがMoorestown時代のプロジェクトとして披露した一部のコンセプト機器は,iPhoneに酷似していた。

 Appleは,iPhoneやiPod touch に搭載されるOS XオペレーティングシステムをARM命令セットで設計する必要があった。というのは,現在スマートフォン用として他に現実的な選択肢がないためだ。しかし,Appleは同社の全てのソフトウェア(iLife, iWork, GarageBandなど)をARMに移植するために必要な開発資源を調査し,それに要する時間と労力の多さにたじろいでいるかもしれない。仮に,ARMのパートナー企業が開発したチップと消費電力,性能の両面で同等,あるいはそれらよりも優れているx86チップをIntelが提供できれば,それは大変魅力的な製品であり,Intelにとって携帯電話メーカーに対する恰好の宣伝材料になるだろう。

 無論,ARMのパートナー企業もそれまでにデュアルコアチップを発売しているだろう。デュアルコアチップが開発されれば,ARMは,消費電力ではIntelと同水準を維持しつつ,性能面でIntelに対し圧倒的優位に立つことになる。しかし,(それはまだ当分先の話なので)この点について考える時間はたっぷりと残されている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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