TorrentSpyにとって最大の敵は自分自身かもしれない。

 連邦判事はBitTorrent用インデックスサービスのTorrentSpy.comが証拠を隠匿および破壊したために公正な審理ができなくなったとしてTorrentSpyに不利な裁定を下した。

 ロサンゼルスの裁判所は,TorrentSpyの運営者の行動が,映画制作会社の自らの主張を証明する能力に影響を及ぼしているため,訴訟の終了というきわめて厳しい制裁が必要だという全米映画協会(MPAA)の弁護士の主張に同意した。

 「裁判所は,正当な判断が不可能なほど原告が不利益を被ったと認定した」と裁定で述べられている。

 「本訴訟の証拠開示手続き中の被告の行為は目に余るものがあった」と裁判所は断じている。「被告は広範囲かつ組織的に証拠隠滅を図り,さらにそのような行為の証拠を隠すために宣誓の下に偽の供述をした」

 TorrentSpyの運営者は著作権で保護された作品名を示すディレクトリの見出しおよび著作権で保護された具体的な作品を探す方法を説明したフォーラムの投稿を意図的に修正または削除し,ユーザーのIPアドレスを隠匿するとともにフォーラムの議長の氏名と住所を明かさなかったと裁判所は認定した。TorrentSpyの運営者は以前に開示命令に違反したという理由で3万ドルの罰金を科され,命令を無視し続けると厳しい制裁があると警告されていた。

 裁判所の裁定は「ハリウッドの大手映画制作会社にとって重大な勝利である」とMPAAのエグゼクティブバイスプレジデントで全世界海賊版対策オペレーション担当ディレクターを務めるJohn Malcolm氏は声明で述べている。MPAAによると違法コピーと海賊版によって映画業界は全世界で110億ドルの損失を被っているという。

 サンフランシスコに拠点を置くTorrentSpyの弁護士,Ira Rothken氏は裁判所の認定に異議を表明し,訴訟の終了というきわめて厳しい制裁について「過酷であり公正を欠いている」と述べている。また,いかなるデータも意図的に破壊されたことはないと思うし,一部の行為はTorrentSpyユーザーのプライバシーを保護するためだったと語った。

 Rothken氏は,これでTorrentSpyにできることは損害賠償の金額について論じることだけになったとし,TorrentSpyは上訴するだろうと述べている。

 「MPAA側は自分たちの主張を証明したとは思えないし,TorrentSpyによる著作権侵害も証明したとは思えない」とTorrentSpyの創設者であるJustin Bunnell氏は述べている。「われわれには上訴するだけの十分な根拠があるので,それを積極的に追求していく」(Bunnell氏)

 裁定は,先週米連邦地方裁判所のFlorence-Marie Cooper判事によって下され,米国時間12月17日に裁判所書記官によって正式に記録された。映画制作会社各社は2006年2月にTorrentSpyがオンラインの著作権侵害を助長し,これに荷担したとして同社を訴えていた。

 2007年夏,TorrentSpyは米国内の利用者からのアクセスに対して次のような警告を表示してアクセスをブロックした。「申し訳ございませんが,あなたはアメリカ合衆国からアクセスしていますのでTorrentspy.comのウェブサイトの検索機能は利用することができません」

 TorrentSpyは国際的にサイトを運営しており,サーバはオランダに所在するとRothken氏は述べている。「サイトの運営は平常通りで何ら変わるところはない。米国の裁判所が国際的なサイトの利用に対して影響を及ぼすことはありえないだろう」(Rothken氏)