営業部長の人材育成に対する悩みは深刻だ。問題は、OJTや研修制度など今までの人材育成手法では、多数派を占める“凡人営業”のステップアップが難しいこと。過去の営業ノウハウが通用しないことも問題を複雑にする。だが案ずることはない。言われたことしかやらない普通の営業でも、トップ営業の頭の中身を“見える化”して学ばせることで、自ら動き出す「トップ営業予備軍」に生まれ変わる。



 山積みの案件に忙殺され、周囲を見渡せば「言われたことだけやる」覇気のない営業ばかり。こんな営業は、現場で指揮を執る営業部長の目にはどう映るか。

 「顧客のIT部門から出てくる情報をうのみにして提案し、いざ経営層まで話が進むとひっくり返されてしまう。結局IT部門の担当者とだけつるんでいて、経営層と対等に語り合うスキルも自信もない」。これは大手ソリューションプロバイダで数百人の部下を率いる、ある営業部長のせりふだ。また、別の中堅ソフト開発会社の営業部長は「2:6:2」の法則を引き合いに出しながら「本音を言うと、下位2割の人間は営業を辞めてもらって構わない」と、もはやさじを投げるかのような境地で話す。

 ここでいう営業の2:6:2の法則とは、「リーダーシップを発揮する優秀な営業が2割、優秀な営業に引っぱられて動く普通の“凡人営業”が6割、そして、働いているふりをする“いまひとつ営業”が2割」という意味だ。あくまで経験則に過ぎないが、多くの営業部長がそんな実感を持っている。

 ただ、下位の2割はそもそも営業の基本スキルが備わっていないことが低迷の原因。努力や教育次第で普通の営業になることはできる。それよりも営業部長を悩ませる最大の問題は、多数派の普通の営業を、どう育てていいのかが分からなくなっていることなのだ。

 勝ち星が計算できるトップ営業は、既に育成の対象ではない。どのソリューションプロバイダも「営業全体の業績アップには、普通の営業からどれだけトップ営業予備軍を育てられるかで決まる」との思いは共通だ。にもかかわらずこうした普通の営業たちは、実はほったらかしにされてきた。



本記事は日経ソリューションビジネス2007年12月30日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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