米連邦取引委員会(FTC)の委員が米国時間11月1日,インターネット企業に対し,ある種の警告を発した。標準でユーザーの情報を収集することを中止し,ユーザーのデータがどのように扱われているかその詳細をより短く明確に説明することを要求している。

 FTCの委員であるJon Leibowitz氏(民主党)は,「現時点では」米政府がそのような措置を強制する必要はないと語った。しかし,同氏自身は,オンラインサービス企業はユーザーに「より意味のある選択肢」の提供を開始する必要があると考えている。例えば,コンピュータのウェブクッキーの初期設定について,ユーザー自身が設定を解除する従来の「オプトアウト」方式ではなく,ユーザーがクッキーを有効にするかどうかを選択できる「オプトイン」方式に改めることなどだ。追跡ツールを使って収集した情報をサードパーティーと共有するサイトが急増する中,こうしたオプションは特に重要だ,とLeibowitz氏は語った。

 FTCが2日間の日程で開催した行動マーケティングに関するワークショップで,Leibowitz氏は開始早々に講演を行い,「オンライン上でのプロフィール追跡に関する現在の『言わざる,聞かざる』という考え方は終わらせる必要がある」と指摘した。

 また同氏は,いずれにせよ,FTCは,ある企業が行動マーケティングに関して「問題ある行動」を取った証拠がある場合には,ためらい無くその企業を提訴する,と語った。行動マーケティングの分野は次第に巧妙化しつつあり,企業は,検索結果など,消費者のインターネット上での習慣の追跡結果を基に作成した広告を配信することを目指している。

 Leibowitz氏は,「インターネットが進化してくるにつれ,ターゲティング広告は巧妙になってきた。それらが,消費者により大きな利益と,より豊かな経験をもたらしたのは間違いないだろう。しかし,問題はそのために一体われわれがどれだけの代償を払っているかという点だ」と述べ,さらに「われわれがプライバシーのために払っている代償は高すぎるのではないか」と付け加えた。

 オンライン広告業界は,当然のことながら,プライバシーに対する潜在的脅威については認識しているとしながらも,自主規制こそがそれらに対する最善の対処法だと主張している。

 ネット広告業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)の会長を務めるRandall Rothenberg氏は,ワークショップの出席者に対し,(ネット企業にとって)負担の大きい政府規制は,新サービスの提供を阻害する可能性があると訴えた(News.comの親会社であるCNET NetworksもIABに加盟している)。同氏はその理由として,「人々の関心や消費のパターンを発見するための個人の特定が不可能なデータ」の分析は徐々に高度化しており,そのデータ分析が,双方向かつ多くの場合無料のコンテンツの急増につながり,さらに,米国の小規模店舗の「復活」に貢献してきた,と指摘した。

 しかし,Leibowitz氏は,米政府の不干渉政策で十分か確信は持てないという。同氏は,非常に有望な方法として,ウェブサーファー向け「追跡禁止」リストの作成を挙げた。この案は,プライバシー団体と消費者擁護団体からなる9団体が10月31日にFTCに提案したものだ。この案は,「(クッキーなどの)永続的な追跡技術」を使用しているすべてのオンライン広告主に対し,(情報追跡に使用している)すべてのサーバのドメイン名をFTCに登録するよう義務づけ,ブラウザがそれらを遮断するよう消費者が設定できるようにするというもの(この案は,電話禁止リストがモデルになっている。これは,消費者がFTCに電話番号を登録すると,セールス電話がかかってこなくなるというシステムだ)。

 Leibowitz氏は,児童やティーンエージャーをターゲットにしたオンライン広告は特に厄介だと付け加えた。1998年に制定された児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)と呼ばれる連邦法は,13歳未満の児童をターゲットにしたサイトに対し,児童に関する情報を収集したり,それらの情報をサードパーティーと共有する前に,データ収集方法の掲載と,立証可能な親の同意の入手を義務づけている。

 しかし,ターゲティング広告手法の台頭に伴い,「広告主と児童の間で親が緩衝の役割を果たす手法」は,「徐々に効果が薄れつつある」ようだ,とLeibowitz氏は指摘する。Leibowitz氏は,法改正の必要性を示唆したと見られるが,米政府が具体的にどのような措置を講じるべきかはまだ定かではないという。

 Leibowitz氏は,インターネット企業がすでに「前進しつつある」点は認めた。特に,米国の検索エンジン大手各社は,「つまずきながら」プライバシーポリシーの改善,データ保持の最小化,個人情報の匿名化を進めているという。

 それでも,Leibowitz氏のコメントには,2つの公益団体が1日にFTCに提出したプライバシーに関する補足的な申立書に詳述されている懸念の多くが含まれていた。それらの団体は,ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)の台頭やマーケティング手法が次第に侵略的になりつつあることを理由に,政府による調査や,将来の1つの可能性として,インターネット上のプライバシーに関する新規則の制定を求めた。

 すでに複数のプライバシー団体が,Googleが提案しているオンライン広告技術企業DoubleClickの買収がプライバシーに与える影響について調査するようFTCに対して要請した。

 Leibowitz氏は,その検討プロセスの詳細について語れる立場にないとした上で,FTCの職員は「この買収契約の複雑さを考慮し,可能な限り迅速にこの問題の処理を進めている」とだけ語った。

 しかし,同氏は「われわれがこの合併について分析しなければならないのは競争と潜在的競争についてであり,プライバシーそのものについてではない」と付け加えた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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