高校3年の夏休みから,大学受験に向けて本気になったこうしろう,他のことには目もくれずなのかと思っていたが,やっぱりこうしろうはこうしろうだった。
毎日新聞社主催のインターネットによる高校生小論文コンテストに応募していたのだ。予選はネットによる応募である。夏休みのある日,「予選通ったから,本選に東京か大阪へ行ってきてもいいけ?」と突然言い出した。「ああ,いいけど,どっち?」と旅費の心配をした。「高校名とかも出るから,学校に補助金出んか聞いてみるわ。文芸部ないから,ひとり文芸部扱いにしてくれんかな」と高校生にしてどこかに予算は残っていないかと嗅覚を働せるのは親に甲斐性がないせいか。
数日後「だめやった。他の部活で結構使っているみたい」と言うので,大阪までの旅費に少しだけ色をつけ渡した。夏には,毎年なにか理由を見つけてきて,関東か関西に行くこうしろうである。8月の終わりに大阪の毎日新聞社に小論文を書きに行ってきた。
10月初旬を過ぎても,こうしろうの口から小論文コンテストの話題がでることはなかったので,終わった話だと思っていた。「予選に一万人も応募する大きな大会だもの,予選を通っただけでもすごいや」と決して口には出さず,妻も私も思っていた。
「小論文コンテスト,最優秀賞やった」と10月にはめずらしく夏日になった17日にびっくり顔でこうしろうが報告する。「最優秀賞って,ひとりか?」と間抜けな父は聞く。最優秀賞が何人もいたら,だれが一番やねん。
サンデー毎日の11月7日売りの号とMSN毎日インタラクティブに当日書いた小論文と本人の感想がのる。
さて,リンクをたどってみていただく前に,こうしろうの姓というか,私の本名について触れておかねばなるまい。金宏 和實(かねひろ かずみ)はライター名である。複数のライター名を使い分けるライターさんもおられるが,私は金宏 和實一本だ。本名は金 宏実(かね ひろみ)という。初めて会う人には,「どちらの方ですか?」とやんわり国籍を聞かれることもめずらしくないが,日本人である。そして,こうしろうの父だから男性である。本家は富山県新湊市(いまでは射水市)塚原にある。ここには金(かね)姓のお宅がたくさんある。
富山県新湊市は珍名の多いところとして何度かテレビ番組でも紹介された。釣さん,味噌さん,菓子さんなど,どんないい加減なやつが姓を決めたんだろうというような名前が多い。新湊市にある高校に通っていたころは,私の姓はめずらしくなかったのである。
兵庫県にある大学に入学したときはかなり困った。下宿探しのたびに,日本人であることを説明しなければいけなかった。そののち友達になるやつらも,一通りの会話のあと「ところで,なに人?」とか聞いてくるので辟易した。
金(かね)姓については諸説ある。私の同級生で,本家筋にあたる金(かね)さんが聞いた話では,田んぼか畠を耕していたら,金属製の仏さんが出てきたことがあったので(どこかの金さん家の仏壇に現存するらしい),金仏という姓を勧められたが,もったいないので仏をとったという。眉唾である。誰かが適当に決めた気がする。
民族の問題をここで論じる知識はないのだが,縄文人と弥生時代以降の渡来人が現在の日本人の中心だとすると,声高に日本人だと叫ぶ意味もないように思う。我々がヨーロッパの人,たとえばイギリス人,フランス人,ドイツ人,オランダ人を見ても,どこの国の人か一瞥では判断できないように,ヨーロッパの人は中国,モンゴル,朝鮮半島,日本の人を見てもどこの国の人かなんてさっぱりわからないだろう。人間としての違いは少ないのである。
だいぶ遠回りをした。そういう訳で,私のペンネームは金 宏実の実を旧字体の實(役所に届ける前まではこの字を使うつもりだったらしい)にして次男かずの和の字を一字くっつけて,金宏 和實としたものだ。宏志郎の宏の字はもともと入っている。だから,最優秀賞受賞者の金 宏志郎がこうしろうのMindStorms日記のこうしろうなのである。ロボットだプログラミングだと言うから理系だと思っていたら,文系だったというオチまでつく。
それではリンクへどうぞ。
妻と私は副賞の心配をしている。協賛が日本冷凍めん協会だから,「冷凍めん一年分もいいけど,かさ張るなあ」,「大学生の間,毎日新聞を毎日届けてくれたらいいな」などと相変わらずたわいない。
おっと,その前に『サンデー毎日』を大人買いしなくっちゃ。
第240話 こうしろう,高校生小論文コンテストで最優秀賞をもらう
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