前回,かずはPCでゲームばかりしていると書いたが,最近ゲーム以外にも夢中になっているものがある。それは「あやとり」である。かずは小学6年生で,かず子でも,かず代でもなく,かずやであり正真正銘の男だ。それが,両手だけでは足らず,足やら口やらを動員して必死にあやとりをしている。「なんであやとりなん?」といぶかっていたのだが,またしても妻が借りてきた本の影響だった。世界のあやとりがわかる『あたらしいあやとり』 - インディアンからイヌイットまで - 土屋書店発行という本に出ている世界のあやとりに挑戦していたのだった。

 あやとりには興味はないのだが,世界に分布していると言われると気になるので,私も読んでみた。なんと,あやとりは日本や中国の他に,ニューギニア,アフリカ,イギリス,アメリカ,オーストラリア,ハワイ,イヌイットの住むアラスカやシベリアなど世界で広く楽しまれているのだ。世界には約2,000種のあやとりがあるそうだ。

 面白いのが最初の構えである。日本では親指と小指にひもを掛けて中指で抜く。これは,日本と中国,そして朝鮮半島で行われている方法で,他のほとんどの国では人差し指で抜くそうだ。アーリーアメリカンであるナバホ・インディアンだけは「ナボハの構え」という独自の構えを持っている。

 グレートジャーニーよろしくアフリカから環太平洋地域に伝わったのだろうか。やっぱり中国,朝鮮半島,日本は1つの文化圏なのだなあ。どうして,ナバホだけが独自の文化を持ち続け得たのかなどと,あやとり1つで空想は世界に広がる。

 かずは「これがイヌイットのあやとりでシベリアの家だ。引っ張ると家が消えて,子供が2人逃げていく」となどと言って,あやとりを見せてくれるのだが,どうしてそう見えるのか理解できない。これは空想を越えて妄想だと,かずのことを「妄想戦隊アヤトリン」と呼ぶことにした。

12月13日 かずに前回紹介したHot Soup Processor(略称HSP)の説明を始めた。まず,HSPスクリプトエディタを開き,プログラムの書き方を教える。

 コードを書くときは,行頭から書かずにタブを入れて字下げをすると説明を始めたのだが,「タブちゃなに?」とかずは聞く。小学6年生のかずはそこそこパソコンが使えるのだが,タブキーを意識して使ったことはないようだ。タブキーやプログラムを作るときに,よく使う記号を「とりあえず呼び名を覚えてくれ」とコロン(:),セミコロン(;),ダブルクォート(”),シングルクォート(‘),スラッシュ(/)とノートに書いた。パソコンを使うときとソフト作るときでは,基礎として覚えなくてはいけないことが少し違う。

 「こんにちは」と表示する小さなプログラムを作り,F5キーでコンパイルと実行ができることを示した。

 コンパイルが「人間が書いたプログラムを機械が理解できるコードに変換する作業」である。などと説明して,熱でも出されたら困るのでやり方だけを教える。
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width 640,400
cls 3
color 255,255,255:mes "こんにちは"
stop
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 コードの意味を順にかずに説明していく。width 640,400は,widthがウィンドウの大きさを決めるコマンドで,640と400がX軸(ヨコ),Y軸(タテ)の大きさの指定だ。コマンドと引数の値の区切りとしてスペースを入れないといけないと説明する。初めてプログラムを書く人には,コード1行でも説明しなくてはならないことが多い。プログラマ相手なら「Basic言語みたいな感じ」だけで説明を終えたいところだ。

 clsはウィンドウを初期化する。clsの引数はBasicとは違い,塗りつぶす色を指定する。「color 255,255,255の意味はわかるか?」とかずにたずねると「えーっと,あれあれ,RGBだ」と答える。でも,「color 255,0,0はどんな色?」と聞くとわからない。RがRedで,GがGreen,BがBlueだとわかるには,中学へ行かねばならぬ。mesはメッセージを表示する命令で,ダブルクォートで囲まれた文字列を出力する。stopはウィンドウがすぐに消えてしまわないようにプログラムを一旦停止させる。

 かずは色を変えたり,出力する文字を変えてプログラムを試していた。「かず,つらくないか?おもしなかったら(富山弁講座:「おもしなかったら」 重石がないわけではなく,面白くなかったらの意),やめてもいいがいぜ」と言うと,「明日もやろう」と答えた。