かずは,兄こうしろうと違い口が回らない。言いたいことがあっても,すっと口から出てこない。しかし,その分体は良く動く。階段などは飛ぶように降りる。学校の階段なら,頑丈だからどう降りても構わないのだが,家の階段だと「壊れやしないか」と心配になる。

 そんなかずにピッタリのタイトルのChallenges(チャレンジ)が『Body Remote』である。VISION COMMANDのレゴカム(PCカメラ)前で体を動かすと,それに合わせてMindStormsで作ったロボットが動くという代物である。

3月8日 かずは4脚のカメラスタンドとS'Cargobot(エスカルゴボット)を作る。



 エスカルゴボットはその名の通り,かたつむりのようにゆっくり進む。



 これが,ゆっくり進む仕組みである。モーターの回転をプーリーに伝え,プーリーがウォームギヤを回し,タイヤが回る。



 エスカルゴボット完成形である。プーリーが心地よいスピードで回転するのに対し,ロボットの動きが妙に鈍いところに愛嬌がある。

 エスカルゴボットのProgram Brief(プログラムの概要)は,
 The challenge is to drive and steer a remote rover by moving your hands infront of the camera.
 Program the camera to watch for motion in each region.
 Program each region to make the rover go in a different direction, like forward turn left, or stop.
 である。理解するために何度か音読する。かずは「ぼく,英語なんかわかりーませーん」という姿勢で日本語で説明してくれるのを待っている。「かず,いつも同じような単語しか出てこないから,覚えようとすれば,だんだんわかるようになるよ」と説得するのだが,反応はふにゃふにゃしている。学校で習っていないことは,わからなくてもいいという態度に「違うだろう。学校の勉強がすべてじゃないだろう」と内心思う。

 レゴカムの視界を分割するパターンは19を使う。



パターン19はきっとBody Remote専用なのであろう。他に使いようのないパターンだ。1から5の領域(region)で動き(motion)を検出する。1に何かが入ったら,Forward命令で2.0秒前進し,3ではBackwardでバック,4でSpinLeft(左折),5はSpinRight(右折),2でBrake(ブレーキ)をかけるようにプログラムを作成する。

 ちょちょいとプログラム・ブロックをつなぎ終えたかずがレゴカムの前で元気よく体を動かすと,エスカルゴボットはノロノロとうごめいた。

 VISION COMMANDはMindStormsのRIS(Robotics Invention System)に比べ,かなり簡単だ。RISのようにモーターを1つずつコントロ-ルしなくても,SpinRightとかSpinLeftという専用の命令があり,Brakeなんて命令で停止までする。ヒントは出るは,わからなかったらサンプルプログラムを表示させて,まねっこすることもできる。

 ちょっと至れり尽せり過ぎて,失敗して「はがやしー思い」(富山弁解説:はがやしい 思うようにならず悔しく,イライラする思い)や,「今日はダメでも,今度また頑張ってなんとかしよう」という気持ちをかずに味あわせてやることができない。