カリフォルニア州パロアルト発--米国時間11月15日にスタンフォード大学でのイベントに登壇したBill Gates氏には2つの顔があった。慈善家という顔と,競争心の強いMicrosoftの共同設立者であり会長という顔だ。

 Gates氏は繁栄はゼロサムゲームではないと述べる一方で,MicrosoftはApple ComputerやGoogle,ソニーといった競合他社に勝つ必要があるという考えを支持してもいる。

 テクノロジ企業の最高経営責任者(CEO)であるメンバーらによって開催され,2006年で3回目となる「TechNet Innovation Summit」において,Gates氏はテレビ番組の司会者であるCharlie Rose氏からインタビューを受け「われわれは,ナンバー1か,ナンバー1に迫る位置につける企業でありたい」と述べた。

 同氏は慈善活動に専念するために2008年にMicrosoftにおけるフルタイムの仕事から身を引く計画を発表している。しかし,この発言からは,Microsoftのテクノロジを引っ張っていくことに対して同氏が情熱を失ってはいないことを表している。

 Gates氏は,Apple ComputerによるiPodの成功を「驚異的で,信じがたく,素晴らしい」と語り,その一方で,Microsoftはメディアプレーヤーの「Zune」を世に送り出すにあたり,iPodにはない機能を盛り込んだとアピールした。同氏は「われわれは,Xboxで実現したような,ネットワーク化されたエンターテインメントを提供していく」と述べ,新たなユーザーを獲得するとともに,乗り換えたいと思っているユーザーを惹きつけるためのメッセージを送った。

 Gates氏はソニーについても触れた。Microsoftは周囲の予測に反して,PLAYSTATION 3より1年も早く,安くて格好の良いXbox 360を発売できたと同氏は述べ,ソニーとの地位は逆転したと発言した(Microsoftは最初の挑戦では,ソニーに手ひどくやられることになった)。

 「われわれはゲーム業界において,ゲームの世界と同様,再挑戦の機会を得ることができる。今回われわれは,Xbox 360を手にして,異なったルールの下で戦っている」(Gates氏)

 同氏はまた,検索大手のGoogleについて,優秀で才能のある人材を獲得しようとする意欲と,ビジネスに力を注ぐ姿勢が,Microsoftによく似ていると述べている。

 同氏は「彼らはソフトウェア企業であり,多くのものをインターネット経由で提供している」と述べるとともに,「われわれのビジネスは多くの分野で競合しており,その範囲は今後大きくなっていくことだろう。それは良いことだ」と語っている。

 とはいえ,同氏によれば,競争は「両社にとって楽しいもの」となっており,マッピング技術や自然言語翻訳技術といった分野での革新が促されているという。

 またオンラインメディアに関してGates氏は,複数の異なるオンラインコミュニティに参加する人が,活動状況や個人情報を1つのインターフェースでコントロールできるような技術をMicrosoftが開発したことを示唆した。

 「多くのコミュニティに参加していても,その状況を一カ所で容易に管理できるような技術を用意している」とGates氏は語っている。

 そんなMicrosoftは現在も,欧州の規制当局との間で法的な問題を抱えたままだ。だが,Gates氏は,Vistaの着地点について「かなり満足している」という。同ソフトウェアには(欧州規制当局の要請により)いくつか変更が加えられたが,欧州向けのバージョンでも主要な新機能の大半が残されているという。

 「われわれは今回初めて(欧州の規制当局に)『何でも言われた通りにする。この機能は削除すべきなのか?』と働きかけた。だが,当局から大きな変更を求める声は一切出なかった。このやりとりには満足している。素晴らしい機能はすべて残ることになったからだ」(Gates氏)

 Gates氏は,問題は,規制当局の要請する変更点が消費者のためになるのか,それとも競合企業のためになるのかという点にあると指摘した。競合企業はMicrosoftが規制されることを常に望んでいると同氏は述べる。

 「ライバル企業の製品を骨抜きにするチャンスがあるなら,それを利用しない企業はないだろう」と同氏は述べている。

 Gates氏は2008年からBill and Melinda Gates Foundationの活動に専念する。同財団では世界の健康と教育に関する問題にも取り組んでいる。

 「世界の大半の人々は発展途上国に居住している。最近の1500件(の発明)のうち,こうした人口の大半に貢献するものは20件だけである」とGates氏は語っている。

 Gates氏は,世界が抱える医療問題をマイクロプロセッサの出現にたとえた。当時,マイクロプロセッサはさまざまな発展のチャンスを秘めていたが,誰かがまとめ役を買って出なければ今日のような進歩はなかったという。同様に今は,マラリアなどの医療問題を解決するための旗振り役が必要だと同氏は述べる。

 Gates氏はまた,友人でもあるWarren Buffett氏がGates Foundationに対して数百億ドル規模の寄付をしたことについて,改めて謝意を表明した。

 Gates氏は,「彼のおかげで夢がさらに大きくふくらむ。わたしはこれが(何らかの形で)必ず社会に還元されるようにする。プレッシャーも感じている」と語っている。

 Gates氏は,2008年以降も非常勤でMicrosoftに勤務する。しかし,それでも同社での仕事が減るのは寂しいという。

 Gates氏は,最初から人生をやり直すチャンスがあったら,何十億もの人々の生活を改善すべく,医学の道に進んでいたかもしれないという。

 「でも,いろいろ悩んだ挙句,この選択肢を選択することはなかっただろう。(医療の知識があったとしても)パーソナルコンピュータのことが頭から離れなかった気がする。結局,またパーソナルコンピュータの道を歩むのだろう」とGates氏は語っている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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