おかしなタイトルである。中学2年のこうしろうに妻がいるはずはなく,この「妻」とは私の妻,つまりこうしろうの母のことを指す。しかし,タイトルを「こうしろう,母にパソコンを教える」とすると,母のイメージがかなり年配の母になってしまう。こうしろうの母,つまり私の妻はそんなに年をくっているわけではなく,さりとて,若いわけでもないが…。(家庭の平和のために言うと)中学生の子供がいるに相応しい年齢である。しどろもどろの文章になってきたが,結局,(私の)妻はこうしろうにパソコンを習うことになったのである。

 今まで彼女はパソコンで友人とメール交換をしたり,ブラウザでページを見たり,ワープロソフトで簡単な文書を作成したりと「一応,パソコン使えます」というレベルであった。今頃になって,なぜか?と説明しだすと長くなるので割愛するが,きちんとパソコンを理解しようということになったのである。で,私ではなくて,なぜ,こうしろうに習うのかと言うと「私よりていねいに,やさしく説明してくれるから」だそうだ。

 そんな妻のために,こうしろうは講習の予定を立てた。

第一回Windowsの基本(一時間)
第二回ファイル操作の基本(一時間)
第三回Windows応用(一時間)
第四回インターネットの基本(一時間)
第五回メールの基本(一時間)
第六回Wordの基本(二時間)
第七回Excelの基本(一時間)
第八回特別講習「かずちゃんに教えてみよう」(二時間)

 Windowsの講習が多いが,この配分ついては私も賛成である。パソコン教室とか講習会では,Windowsの仕組みを教えることに,あまり時間を掛けずにワープロソフト,表計算ソフト,メールソフト,ホームぺージ作成と結果が目に見えるものにウェイトを掛けることが多い。有料の教室,講習会では教えるとはいえ,客商売なのであるから,やむを得ないことなのかもしれない。しかし,各ソフトに同様の使い勝手を提供しているのはWindowsなのだから,目に見える結果は伴わなくてもWindowsを理解することが重要なのである。

 面白いのは,第八回 特別講習「かずちゃんに教えてみよう」である。かず(小学5年)にWindowsや各ソフトウエアについてちゃんと説明することができるようになれば,それで合格ということらしい。

 そうなのである。「使える」と「説明できる」の間には,結構距離がある。「説明はできないが,使える」というのは,頭の中で整理が付いてないが,やれば何とかなるというまだ少しボンヤリした部分を残した状態であるか,あるいは完全に理解しているのだが,暗黙知を形式知に変換することが苦手で,うまく伝えることができない場合,例えば名プレーヤーが必ずしも名コーチでないというケースである。

7月4日 第一回の講習が始まった。「まずは話が通じやすいように」と前置きをして用語解説を始めたこうしろう。ハードディスクは整理ダンスで,CPUは頭,メモリは・・・と説明を続ける。この日,私が隣で聞いていて「ああ,いい説明だ」と思ったのが次である。
「フォルダは引き出しで,引き出しの中のもの(ファイル)をメモリに入れて,使うのだ。」
データもプログラムもハードディスクかどこかのフォルダに入っていて,それをメモリに読み込んで使うのだという普遍的な説明である。



7月5日 エクスプローラ使えれば,まわりから「この人できる」と思われること請け合いとハイテンションでこの日の講習は始まった。右クリックしたら,ペロッペロッと出てくるやつ(メニュー)の説明や「ショートカットはソフトウエアやファイルへの近道」と,どんどん説明を続けていく。

 「こうしろう,お前,説明慣れとるな」と感心すると「まあ,小学校でも中学校でもやっとるから」と軽くかわす。母より少しだけ背が高くなったこうしろうは自信持ってコンピュータを教えている。妻は「はい」,「ああ,わかった」と息子に習うことを楽しんでいるようだ。