みなさま,明けましておめでとうございます。新年第1回目のMindStorms日記です。

 さて,時間は1年ほど遡ります。6年生の終わり頃,こうしろうは「僕,中学になったら,基本情報技術者の試験受けたい」と言い出した。「う,うーん。そりゃ,難しいぞ。高校生でたまに受かる人はいるけどね。」
 
 基本情報技術者試験は経済産業省(旧通産省)が実施している情報処理技術者試験の1つである。情報処理技術者試験は平成13年度に大幅に改正され,従来の第二種情報処理技術者試験が基本情報技術者試験に変更された。この試験はソフトウェア開発者に必要な基礎知識の習得度合いを測るものである。試験範囲はハードウェア,ソフトウェアの知識,システム開発・運用,セキュリティ,ウィルス対策,ネットワーク,データベース,情報システムと経営の関わり,アルゴリズム,プログラムの作成と当然,大人の知識も要求される。

 「そりゃ,中学生には無理だろう」というのは簡単だが,とりあえず本気度をみてみようと「小学校の内に,この本読めたら挑戦してみれば」と坂村健教授著の『痛快コンピュータ学』を差し出した。軽いネーミングと,ルーズソックスのおねえちゃんが2人並んでいるキャピキャピ系の表紙に反し,内容は堅く,濃い。大人でも読了しにくい本である。中学生になる直前の春休みにこうしろうは「フー,フウ」いいながら,毎日この本と格闘し,なんとか読み終えた。もちろん,どこまで理解しているかは別の問題である。

 中学生になってからは,入学祝いにもらった図書券で基本情報技術者の参考書を購入して,つまつまと勉強しては(富山弁解説 つまつまと:少しずつ,継続的に,の意),疑問点を私に聞きに来ていた。学校の勉強にもこれほど熱意を持ってくれたら…という親の本音も当然,有る(中学の参考書や問題集は一冊も持っていなかったりする)。

 まともな親なら,もっと中学生らしい資格やせめて同じ情報処理技術者試験でも,もう少し受かりやすそうな利用者向けの初級アドミニストレーター試験を進めるべきである。しかし,残念ながら親もまともではない。いや,少なくとも父親は「小学生だから,こんなもんだ」とか「中学生はここまで」というように手かせ足かせを子供に,はめる事が大嫌いだ。

 たとえドンキホーテのようになったとしても,大きな目標に向かって努力しているものに「やめておけ」とは言いたくない。受かるか落ちるか,そんなことはどうでも良くて(高校入試の時は,さすがにこんなことは言えないだろう。情報処理試験は一回5100円の出費にさえ目をつぶれば,何度受験してもよい),高い目標を設定して少しずつ近づこうと努力するところに意味がある。

 そんな私の気持ちを知ってか知らずか(知るわけないか),平成13年度の改正で年齢制限が撤廃された。小学生だって受験しても良くなったのである。過去のデータを拾ってみた。受験者の分類ごとに合格者数と率が情報処理技術者試験センターのウェブに掲載されている。学生の分類の中に,なんと小・中学生という項目がある。平成13年度基本情報技術者試験に挑んだ小中学生は春・秋合わせて13名,合格者が3名,合格率23.1%(個体数が少ないので統計としては意味ないのであろうが)この率は高校生の5%をはるかに上回り,大学院生の29.4%に次ぐ数字である。大学院生の30%近い数字はさすがであるが,大学院生ならもうひとつ上のソフトウェア開発技術者試験を受ければと言いたい。もちろんこれは余計なお世話である。

 もっとも高校生より下は小・中学生とひと括りになっているだけで,漢字や英語,数学の記号などを含めて小学生には読めない字が多すぎる試験なので,実際に受験したのは中学生なのだろうと思う。その中に3名の合格者がいる。こうしろうが受験することを,全くばかげたことであると言えなくしてくれた先駆者達の実績である。

 そういうわけで,こうしろうは平成14年度春期の基本情報技術者試験に挑戦する。申込期間が1月7日~2月8日,受験日は4月21日。平成13年の社会人の実績を見ると,ソフトウェア企業と情報サービス業に従事する人が7万名受験して合格者1万名。全トータルで合格率は14.5%,試験時間午前の部150分,午後の部150分,中学2年生にとっては,とてつもなく難関であることに間違いはない。でも大人のように「勢いつけよう」と昼休みにビールを飲むことのないのが救いである(若かりし日の私のことか?)。試験に失敗して,世の中には自分の力の及ばない難しいものがあることを知るのも良いのかもしれないが,とりあえず受験者として試験に対して失礼のないレベルになるまで,この3ヶ月の間,教えられることは教えていきたいと思う。

「さあ,いけ。こうしろう」

 こうしろうが基本情報技術者試験の勉強に取り組む様子もこの日記に書いていこうと思います。基本情報技術者試験向けの軽い解説になればいいのですが…。

 どうぞ,本年もよろしくお付き合いください。