MindStormsは共同作業でロボットを開発するのに向いていない。頭脳であり、入出力ポートを備えたRCXを中心にロボットを作成していくから、RCXを握った人が作業の中心になる。また、キチンと設計した上でロボット開発に着手するわけではないので、ひとりが頭の中でイメージを膨らませて作業を進めると誰もついていけなくなってしまう。我が家ではたいてい、こうしろうが中心である。かずは「あーあー、また僕することないわ」と不平を漏らすこと度々である。そういうわけで、今回はみんなが参加できるようにジオラマを作成することにした。ジオラマだと、かなり大きいものになるし、部品点数が多いので複数メンバーで作業を分担できる。

 ジオラマのテーマはこうだ。「囚われの身のトラウトマン大佐を、救出せんとたった一人で敵の基地に潜入するジョン・ランボー。敵の基地は戦車やヘリコプターで武装されている。そこへ乗り込むランボーの武器はボウガンとナイフだけだ。」そう、『ランボー3 怒りのアフガン』のイメージである。ジャ、ジャ、ジャーン♪ジャーン、ジャーン♪と勇ましく始まったプロジェクトであったが…。

 さて、ランボーシリーズもかなり古い映画になってしまったが(東西冷戦時代の記憶も風化しつつある。こうしろうは米ソの対立が長きにわたったこと知らないし、かずはソ連という国家があったことさえ知らない。時代は移る。)毎年テレビで再放送されるので、こうしろうもかずも良く知っている。以前、こうしろうは「そんな、あほな」と笑いながら、画質の劣化が目立ってきた『ランボー』をX曜映画劇場で見ていた。かずは、と言うと、これが好きなのである。「戦い系」や「メッチャ強いヒーロー」が。最近、レンタル・ビデオ屋へ行くとジャッキー・チェンのコーナーから離れない。しかし、X曜映画劇場もやることがなくなったら『ランボー』、『釣りばか』、『トトロ』とひたすら繰り返すのはなんとかならないものか。(ついつい、見てしまう自分が悪いのだが。)

6月17日 敵の基地から作成を開始した。こうしろうは見張り用のやぐら、かずは戦車、私はトラウトマン大佐が閉じ込められている敵の本部というか小屋。(この辺までは、まだ良かった。それぞれ工夫しながら、楽しそうに作業を進めていた。)
  
6月24日 豆電球や乾電池を持ち出して、サーチライトや照明を作成した。(この辺から、暗雲がたれ込めてきた。)こうしろうがサーチライトを担当したが、持ってくる豆電球がどれも球切れだったり、リード線の長さが「帯に短し襷に長し」だったりして「口から生まれてきたこうしろう」がどんどん無口になっていった。一方、かずは「戦い系」を愛する血を熱く煮えたぎらせ、ヘリコプター巻き上げ装置に心血を注いでいた。(このかずの情熱だけが救いであった。私はこの時点でもう「やらなきゃ、よかった」と後悔していた。アイデアもテクニックも何もないのである。こうしろうは半ばやけくそであった。)

7月1日 私の帰宅時間が遅かったため、土曜8時過ぎからのマインドストーム・タイムは中止となった。(やりたい時は私がいなくても勝手にやるくせに)

7月2日 土曜日にマインドストームが出来なかった場合は日曜日にその分を取り返すことが多いのであるが、「やろう、やろう」というかずに対して、こうしろうの首が縦に振られることはなかった。(「やっぱり、やらなきゃよかった。ジオラマなんか作ろうと言った私がバカでした。」)

7月8日 ジオラマ大作戦最終日。「こうしろう、取りあえずプログラム作って。えーと、RCXのスイッチ入れたらサーチライトを回して、タッチセンサーを押したらヘリコプターを巻き上げるようにして。」こうしろうが「こんな簡単なプログラム作らんといかんのかい」と思いつつ作成したプログラムが以下である。



 Set Powerでモーターの回転数を、Set directionで回転方向を定めモーターを回す。ヘリコプターを巻き上げるモーターはタッチセンサーを押している間だけ回転する。




 サーチライトがランボーを照らし出し、ヘリコプターが舞い上がる。「あー、良かった。終わった。終わった。」でも、片付けるのがまた大変であった。やっぱ、やんなきゃ良かった。