1月4日 お年玉で懐の暖かくなったこうしろうとかずのリクエストでトイザらスに行く。富山県にトイザらスは一軒しかない。我が家からは車を飛ばして40分はかかる。MindStormsシリーズのDROID Developer Kit(Star WarsのR2D2みたいなやつ)やRobotics Discovery Set(PCでプログラミングしないRobotics Invention Systemみたいなやつ)が並んでいた。こうしろうはレゴ・テクニックシリーズのヘリコプターを購入した。

 家に帰るとさっそく、こうしろうがヘリコプターを作り始めた。私は横で「どこにマインドストームのモーターを付けようか」などと考えながら眺めていた。



 しかし、このヘリコプターは良くできている。メインローター(大きなプロペラ)とテールローター(しっぽの小さなプロペラ)がギヤで連動している。操縦桿を前後に動かすとメインローターの角度が変わる。今回の話を書くためにヘリコプターについてちょっと勉強してみた。ヘリコプターはメインローターの回転によって浮力と推進力を得ている。メインローターの角度を操作することで前進、後退、左右等の方向を変化させる。テールローターの主な役割は、反動トルクを抑えることだ。テールローターがないとメインローターを回す反動でヘリコプター自体がメインローターの逆回りに回ってしまう。レゴ・テクニックのヘリコプターは単純であるが、ヘリコプターの動作原理をきちんとシミュレートしている。

 「こうしろう、やっぱモーターつけて、RCXにつないで回してみるがいろ」、「もちろん!」力強い返事が返ってきた。「ぬぬ、お主やる気だな。」

 「これモーターで回したら飛ぶかな?」子供らしい質問に「飛ぶわけないやろ」と答えてから、遠い日の記憶が甦った。

 「おじちゃん、これ飛ぶかな?」習字塾の帰り道にプラモデル屋でヘリコプターを買った。ちょうど今のこうしろうと同じぐらいの歳の頃だった。その日はめずらしく500円もの大金を持っていた。「これ飛ぶかな?」という私の質問にプラモデル屋の店主は優しく微笑みながら「これは飛ばないよ」と言った。「飛ぶわけないやろ」では子供の夢を壊してしまう。幼い日の想い出はセピア色に染められて美化されていく。でも「どれなら飛ぶんや」と突っ込んでおくべきだったかもしれない。

1月6日 帰宅すると、こうしろうが「モーターをつけて回してみたよ。プログラムも自分で作ったよ。モーターのパワーを最大にしてプロペラ回すだけだけどね。」と話し掛けてきた。「そうそう、自分でやってみるががいいがいちゃ。」(富山弁解説:富山弁では「~だちゃ」とか「がいちゃ」など語尾に“ちゃ”が付くことが多い。別に茶どころではない。「自分でやってみるががいいがいちゃ」は「自分でやってみるのがいいんだよ」という意味である。)



 こうしろうの言葉の通りプログラムはいたって単純だ。モーターをONにし、「Set Power 8」で回転数を最大にするだけだ。



 モーターの回転数を最大にしたのは、「飛んだらいいな」というこうしろうの夢だろう。