仮にあなたが演奏家だとしよう。地域が異なる2つの場所から公演の依頼を受けた。どちらを引き受けた方が、ファンと自分にプラスになるのか? こんな悩みを解決してくれるデータ分析会社が米国にあります。

 データサイエンティストで音楽家のマット・アーミー氏が設立したアーチスト・グロースです。独自の分析手法を使い、謝礼額や仕事場所への移動時間や経費、現地のファンの数などを根拠に引き受けるべき仕事を助言する。今は芸能人とそのマネジャーを対象に契約者を増やし、1万2000人の顧客を抱えます。中には人気歌手であるアリシア・キース関係者も。まさに人材派遣データサイエンスの分野を切り開きました。

 芸能事務所と契約して、マネジャーがつく歌手や音楽家は多くありません。ほとんどは自らが日程や金銭管理を手掛けます。自らも歌手であるアーミー氏は、そうした独立系音楽家の価値をデータ分析で最大限高めようと、独自のソフトを開発。特徴は、収入と支出、時間という観点を網羅している点です。都市を巡るツアーならばどのルートが最もガソリン代が安くなるか。ファンが多くてチケットやTシャツが売れそうな場所はどこかなどを分析します。「ファンに喜んでほしくて遠くまで行って演奏したものの赤字」という事態を避けられ、芸術とビジネスを両立させる効果があります。

 アーチスト・グロースは今後、医療分野などのサービス対象を多様な職業に広げる方針。訪問販売やヘルパーなど出向くことの多い職業の強い味方となりそうです。