日々の物価の動向が分かる新たな指標。今年5月から東京大学が公表している。消費者の実感に近いデータを収集・分析することで、企業の様々な意思決定に役立つものとして期待されている。


 「デフレ脱却はどれくらい進んでいるのだろうか」。物価の日々の動きを把握できれば、企業のマーケティング担当者や投資家、市場関係者ら様々な立場の人々の参考になり、意思決定スピードを高めることにつながると期待できます。

 現在、年金支給額や労賃を決める際の目安になっている物価指数は、総務省の消費者物価指数(CPI)です。CPIは、東京大学の日次物価指数とは異なり、月に1回、約1カ月後に公表されます。総務省は、全国に調査員を派遣して価格を調べるため、集計に手間と時間がかかります。物価の動きをリアルタイムに把握できない点や売れ筋商品の変化・一時的な値下げなどを反映しにくいなどの課題があるとされています。

 これに対し、消費者の実感に近い物価動向をつかむための独自指標として、東京大学大学院経済学研究科・経済学部の渡辺努教授が提唱しているのが「東大日次物価指数」。2013年5月から東大のホームページ上でデータの公開が始まりました。データ分析で競争力を高めたい企業にとって、日次物価指数は注目すべき新たなデータです。

動向:POSデータを生かす

 日次物価指数の基になるのは、POS(販売時点情報管理)データです。日本全国の約300のスーパーから、食料品(生鮮食品は除く)や日用雑貨など約170品目20万点について、値段と販売状況に関するデータを収集しています。