企業にとって人材採用は欠かせない仕事。優秀で長く勤めてくれる人材が欲しくても、思い込みや印象で誤った判断を下すこともあります。そこで注目を集めているのが、ビッグデータを活用する採用分析。職種に向くタイプや選考方法などを科学的に分析、実践に生かすものです。

 米カリフォルニア州にあるイボルブは、ビッグデータによる採用サービスで顧客を増やしています。話題になったのは、米ゼロックスと行ったコールセンターの採用事例。優秀で長く働く人材を採用するために過去の人事データを共同で分析しました。そこから分かったのは、過去の職務経験は仕事ぶりに大きな影響を与えないこと。通勤しやすい場合は長く定着する傾向があることなどです。コールセンターの仕事は応募者が多いので選考が大変な割には、入れ替わりが激しいのが悩み。ゼロックスはデータ分析で、面接での質問まで整え採用効率を高めています。

 別の企業では優秀な社員の転職を防ぐために、平均的な社員と比べた給与格差の最適値を検証。イボルブの分析で「10%上乗せ」が適当との答えを導き出しました。このように社内の人事データから「傾向値」を算出し、人事に関する思い込みや感覚的な決断を減らしています。一方、「定着率の高い従業員はどのWebブラウザーを使っているか」など大胆な分析も始まっています。

 従業員の経歴や得意分野を一括管理する「タレントマネジメント」。その進化形として、人材募集、採用、定着までデータに基づく人材把握の動きが広がりそうです。