NICチーミングとは、コンピュータやネットワーク機器が備える複数のネットワーク・インタフェース・カード(NIC:ニック)を、1つのNICとして使えるようにする技術である。複数の物理NICを論理的な1つのNICとして使って、ネットワークインタフェース部分を冗長化して耐障害性を高める。

 冗長化の方法は、「リンクアグリゲーション」(LAG:ラグ)と「フォールトトレランス」(FT)の2つに分けられる()。両者の大きな違いは、通常運用時にスタンバイ状態(使用していない状態)のNICがあるかどうかだ。

図●NICチーミングによる冗長化である、「リンクアグリゲーション」と「フォールトトレランス」
図●NICチーミングによる冗長化である、「リンクアグリゲーション」と「フォールトトレランス」
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 リンクアグリゲーションとは、複数の物理リンク(物理NIC同士をつなぐ回線)を束ねて、1つの論理リンク(OSやソフトウエアから見える回線)にする方法。ある物理リンクに障害が起こっても、束ねているそれ以外の物理リンクだけで通信を継続できる。

 一方、フォールトトレランスとは、1つの論理リンク内にある複数の物理リンクを、アクティブとスタンバイに分けて運用する方法。アクティブの物理リンクがダウンすると、スタンバイ状態の物理リンクに自動で切り替えて通信を継続する。

 リンクアグリゲーションは、帯域の増加や上位に接続したLANスイッチの負荷分散が可能になるなど、フォールトトレランスにはないメリットがある。ただし利用には、接続するLANスイッチが対応している必要がある。現在広く使われているリンクアグリゲーションの規格は、IEEE 802.3adである。

 スイッチベンダーはもともと、リンクアグリゲーションの機能を「トランキング」や「イーサチャネル」といった名称で自社のスイッチに搭載していた。後に多くのベンダーがIEEE 802.3adに準拠したため、トランキングはリンクアグリゲーションとほぼ同じ意味で使われるようになった。例外は米シスコシステムズのイーサチャネルで、IEEE 802.3adの仕様の一部と同社の独自仕様の両方に対応している。

 複数のNICを搭載したコンピュータでNICチーミングを利用する場合、OS標準の機能で対応するか、NICベンダーが提供する対応ドライバーが必要になる。Windowsの場合、Windows Server 2012からNICチーミングに対応した。