Clickは、ネットワーク機器をパソコン上で再現するソフトウエア。正式名称は「Click Modular Router」で、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエディー・コーラー氏(現在はハーバード大学に所属)が開発した。http://read.cs.ucla.edu/click/などで無償で配布されている。

 Clickがユニークなのは、「フレームを受け取る」「フレームを転送する」「ルーティングテーブルを参照する」といった様々な基本機能が、モジュールとして用意されている点だ。それらを組み合わせると、ブロードバンドルーターのようなネットワーク機器をパソコンの中で自由に組み立てられる。この特徴が評価され、米国の大学ではネットワークの研究や教育などに重宝されている。

 一般的なネットワーク機器では、機能はハードウエアに組み込まれている。動作のパラメーターは変えられるが、動作そのものはブラックボックス化されていて見えにくい。これに対してClickは、まるで電子ブロックのように、モジュールを組み合わせて自由に動作を定義できる()。

図●一般のネットワーク機器とClickの違い<br>Clickは、スクリプトでネットワーク機器の動作を記述できる点が特徴である。
図●一般のネットワーク機器とClickの違い
Clickは、スクリプトでネットワーク機器の動作を記述できる点が特徴である。
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 Clickの動作は、「コンフィグ」というファイルに記述する。例えばルーターの動作を再現したいと思ったら、その基本動作に対応するモジュールを選び、それらをどのように組み合わせればよいかを考えて、コンフィグを作成する。パケットを生成してネットワークに送りだす「パケット生成器」とか、IP通信の疎通確認を行うネットワークコマンドであるpingに応答する「ping箱」など、一般には存在しないネットワーク機器を容易に作ることもできる。