新しい情報システムを構築したものの、経営方針に沿ったものにはならなかった――。IT(情報技術)活用の現場では“残念なシステム”ができてしまうことがしばしばあります。

 こうした的外れなシステムの構築を防止する手法として、注目を集めつつあるのがGQM+Strategies(Goal-Question-Metric+Strategies)です。経営方針や事業方針に合致した情報システムを構築するための方法論です。ドイツのフラウンホーファー研究機構の研究所が開発した手法で、日本ではソフトウェア工学の研究機関で独立行政法人である「情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター(IPA/SEC)」がその普及を推進しています。

 GQM+Strategiesでは、企業が事前に定めた経営方針・事業方針に基づき、情報システムのあるべき姿を導くための手順や作成すべき文書を規定しています。特に重視しているのが、根拠の明文化です。新しいシステムを構築することを決めた理由、つまりその根拠を、「事実」と「推測」といった2つの項目で説明。この手法を使えば、「経営や事業方針に沿ったシステムなのかどうかチェックできる」とIPA/SECの菊島靖弘リサーチフェローは説明します。

 同手法は既に実用段階に入っています。国内でも大手金融機関の保険事業立ち上げプロジェクトで適用され、成果を上げています。伊藤忠テクノソリューションズやコンサルティング会社のクニエなども同手法の活用に熱心。IPA/SECはWebサイトでこの手法の学習資料やツールを公開しています。