IT(情報技術)システムの構築から給与計算まで、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)といえば、インドが世界の主役です。インドは数学や英語に優れた人材が多く、米国企業はBPOのインド移管を進め、そのなかからインフォシスやタタコンサルタンシーサービシズなど大手BPO会社が成長しています。

 ところが最近、その動きに急激な変化が見られます。BPOを米国内に戻す企業が増えているのです。国内回帰を巡っては、米アップルなど製造業が生産拠点を中国から米国に移す動きもあります。これをリショアリング(再接岸)といいます。

 実はBPOリショアリングも同時に進んでいるのです。インフォシスやタタも、それぞれ米国での新規雇用や拠点開設を打ち出しています。

 BPOリショアリングの背景には幾つかの要因があります。まずは製造業の生産回帰。中国の政治的リスクやコスト増に伴い工場が米国に戻ることで、BPO拠点もアジアだけではなく、米国に置きたいという判断が増えてきています。

 雇用面の影響もあります。米国企業からBPOを受注するインド企業は必要に応じて、米国の拠点にインド人の社員を派遣していました。ただ、最近はビザがなかなか下りない傾向にあるようです。そこで米国人の採用を増やしています。この面からもリショアリングが進んでいます。

 研究開発の強化も見逃せません。環境エネルギー事業の拡大で、米大手企業は研究者を増やしています。その際、ITシステム開発などのBPOは意思疎通を円滑にするため、研究施設の近くに置いています。BPO大国は米国という時代も近いかも知れません。