欧州を中心に、インターネット上にさらされてしまった個人情報を削除できる、「忘れられる権利」を創設する機運が高まっています。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をはじめとしたIT(情報技術)サービスの普及に伴い、ネットでのプライバシー侵害や個人に対する悪評被害が多発しているためです。

 欧州連合(EU)の欧州委員会は2012年1月、1995年に制定したデータ保護指令を強化するための包括的な規制・指令案(法案)をまとめました。そこに、正当な理由がある場合を除いて、ネット事業者が個人情報を削除しなければならない権利の創設を盛り込んだのです。

 忘れられる権利の創設に向けた動きが加速する一方で、懸念もくすぶっています。個人にとって都合が悪い情報を一方的に削除できる権利を認めてしまえば、「表現の自由」や「知る権利」が損なわれるのではないかというものです。

 もしも忘れられる権利が認められれば、米グーグルや米ツイッターといったネット事業者は大きな影響を受けます。個人情報を削除する手間は膨大だからです。そもそもネット上に拡散した個人情報を隅々まで抹消できるのかという議論もあります。