米アップルのiPhoneやiPadが中国の工場で作られているように「中国は世界の工場」が産業界の現実でした。ところがここに来て、米国企業に注目すべき動きが広がっています。米国本土への製造拠点の回帰です。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は中国とメキシコで行っていた家電製品の生産を10億ドルの投資により、米ケンタッキー州の工場に戻します。米キャタピラーもトラクターの製造の一部を日本から米国工場に移す予定です。国外に委託していた生産が、岸(国内)に戻る意味でリショアリングと呼ばれています。

 米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が2012年2月に実施した、米国106社の経営幹部を対象にしたオンライン調査でも、37%が「中国での生産を見直し、リショアリング(米国回帰)を考えている」という結果が出ました。BCGはこの傾向がさらに強まると見ています。

 背景にあるのは、中国における人手不足や賃金高騰です。オバマ政権は雇用創出による経済の回復を示したいため、リショアリングの世論の高まりを歓迎しています。そのため、リショアリングが特に声高に叫ばれている面もありそうです。この動きが長く続くのかどうか。またどれほどの雇用を生み出すのか。効果を見極める必要があります。