宮川 太一(NTTデータ経営研究所 ソーシャルイノベーション・コンサルティング本部 コンサルタント)

 2013年5月24日に政府CIO法(内閣法等の一部を改正する法律)が成立し、5月31日に公布・施行されたことで、電子行政推進の司令塔となる「内閣情報通信政策監(政府CIO)」職が新設されました。

 初代政府CIOには、リコー副社長を務めた遠藤紘一氏が就任しました。同氏は2012年8月10日に非常勤の「政府情報化統括責任者(政府CIO)」に任命されましたが、政府CIO法の施行前は法的な裏付けがない状態でした。同法により、常勤・専任の「内閣情報通信政策監」として遠藤氏が就くのに合わせ、内閣官房には従来の情報通信技術(IT)担当室と2012年8月に設置された政府情報化統括責任者室(政府CIO室)とを統合して、「情報通信技術(IT)総合戦略室」が設置されました。室長は政府CIOで、スタッフ職員のほか、約20人の政府CIO補佐官が属しています。

 政府CIOは、各府省のCIOを統括し、各府省のIT投資や技術標準、セキュリティなどの運用状況を横串で管理し、政府情報システムの刷新を円滑に進めるのが役割です。また、2015年10月ころに施行される「社会保障と税に関わる番号制度(マイナンバー制度)」に関する施策を推進する役割も担っています。

府省の枠を超えた全体最適など課題の解決を目指す

 これまで我が国の電子行政に関する戦略の企画・立案・推進は、IT総合戦略本部(旧・IT戦略本部)とその下に置かれたCIO連絡会議等が担ってきました。しかし、政府として府省横断的な取り組みを明確な責任と迅速な決定の下に進めていくための統率力・調整力は、必ずしも十分に備わっていませんでした。

 また各府省でも、CIOの設置、CIO補佐官の設置、PMO(Program Management Office:府省全体管理組織)の設置など、府省内の情報システムやIT投資を管理するための体制整備が順次進められてきましたが、その体制がしっかりと機能しているとは言い難い状況にありました。これに加え、業務プロセスと制度改革が一体となった取り組みや、府省の枠を超えたIT投資の全体最適、情報システムの相互運用性の確保なども不十分な状況でした。

 さらに、情報セキュリティの観点からも、多様化・高度化・複雑化する情報セキュリティ上のリスクなどの環境変化に対応するとともに、政府全体での対策の浸透・定着をより一層進める必要がありました。

 こうした背景から、従来の反省と問題点の解決、さらに電子行政の取り組みを迅速かつ強力に推進していくために、政府の電子行政推進の実質的な司令塔として政府CIO制度が導入されました。