経営理念やビジョン、ミッションなどを組織に浸透させたり、社員の行動に落とし込んだりする取り組み。日本企業が海外進出を拡大するうえで重要性が増している。


 「彼はうちの会社らしい人材だ」「実にあの会社の社員らしい行動だね」─。企業のイメージが明確で、社員が特定のパターン、いわゆる「らしさ」に沿った行動をする時、こんな表現を使うことがあります。こうした「らしさ」を明文化して経営理念や行動規範などにまとめ、全社に浸透させていくのがウェイマネジメントです。

 取り組む企業の多くは、ワークショップなど社員が集まる場で自社のウェイについて考える機会を設けています。ウェイマネジメントを実践するためにビジョンを書いたカードや小冊子を全社員に配布する企業も増えています。

 ただし、こうしたものを読んだり暗記したりすることがウェイマネジメントではありません。ウェイを読んで自分がどう感じるか、自分の仕事のなかでどのように実現できるかを考えるプロセスこそが重要です。ファシリテーションに工夫して、経営層と社員や、社員同士が対話を通じて考えを深められるように促します。

効果:海外進出時の求心力

 ウェイマネジメントを導入する目的は様々です。典型的なパターンの1つは、不祥事などで企業ブランドが傷ついた時に取り組むケースです。経営理念を行動規範に落とし込んで組織に浸透させ、企業価値を損ねる行動を防止します。グループ企業の社員同士に連帯感を持たせたり、業績が悪化した場合に社員のモチベーションを上げたりするためにウェイマネジメントを実践する企業もあります。

 近年特に増えているのが、事業の海外展開に伴ってウェイマネジメントを取り入れる例です。人材の流動化が激しい環境下で、優秀な人材を報酬以外の要素で引き留めるため、ウェイへの共鳴や、組織メンバーへの共感といった感情を喚起することは有効です。

事例:双方向で消化

 ウェイの表現手法は多種多様です。例えば、YKK(東京都千代田区)は、創業者の吉田忠雄氏の言葉を文書にまとめ、世界各国の社員がそれについて話し合うワークショップを開催しています。吉田忠裕代表取締役会長をはじめとする経営トップが世界中の拠点を回り、「失敗しても成功せよ」「他人の繁栄をはからなければ自らも栄えない」といった創業者の言葉について、現地の社員が自由に討論する場を作って、YKKで働く意義を考えるように促します。

 同様にコマツも海外拠点でのウェイの浸透に取り組んでいます。ですが、ウェイの記述はYKKと大きく異なります。「コマツでは□□と考えられている」といった表現を多く用いて、創業者など特定の人物の言葉ではなく、組織全体の傾向であることを明確にしています。