データセンターにあるコンピュータを多数の企業で共用しながらも仮想的な“専用サーバー”として使えるサービス。クラウドコンピューティングの代表的な利用形態である。


 クラウドコンピューティングの主なサービス利用形態として、データセンターに設置された1台のコンピュータ機器を複数の企業で共有するというものがあります。それでいて特定企業向けに“専用サーバー”を用意しているかのような仕組みを提供します。このサーバーをVPS(仮想専用サーバー)といいます。同様に、VPSを実現するソフトウエアは仮想化ソフトと呼ばれています。

 従来型のサーバー共用サービスでは、ソフトウエアを自由にインストールできないとか、サーバーに大きな負荷がかかる処理は禁止など、様々な制約がありました。一方、VPSは企業ごとに自由にソフトを搭載して好きな用途に使えます。外部に公開するウェブサーバーとして使っても構いませんし、大量データを保管・蓄積するのに使ったり分析処理に使ったりすることもできます。まさに企業ごとの専用サーバーのように利用できるわけです。

効果:外部サーバーを自由に利用

 VPSの草分けは、米アマゾン・ドット・コムが2006年に開始した「Amazon EC2」です。その後、国内の通信事業者やプロバイダー(ISP)などが相次いで参入しました。VPSのメリットは、導入のイニシャルコストが安いことです。実際に初期費用は無料、月額利用料は数千円といった格安のサービスがあります。サーバーの処理量やデータ通信量によって料金が変動する従量課金制を採用するサービスも多く、企業は月ごとの利用の増減に応じてシステムコストを変動費化することができます。

 コスト面でVPSは有利なことが多いですが、必要な処理能力やネットワークの使用帯域が大きい場合には、仮想ではない文字通りの「専用サーバー」を自社で購入し、運用した方が割安になることがあり得ます。大規模システムの構築では導入前に精査が必須です。加えて、VPSを使いこなすには、OS(基本ソフト)の専門知識が必要です。VPSではOSの操作を利用企業側でするのが原則だからです。同様にセキュリティー対策も自己責任になります。

 利用中のハードが故障した時は動作しなくなることもあります。2011年4月にはAmazon EC2で大規模障害が発生し、EC2を利用する有名なサービスが軒並み、動作不安定に陥りました。