在宅でコールセンター業務をこなす電話オペレーターのこと。システムや通信環境の充実で導入しやすくなっているが、労務管理や機密保持には依然課題がある。


 顧客からの問い合わせや注文などの電話を受けるオペレーターは通常、コールセンターがあるオフィスに通勤して働いています。それに対し、自宅でオペレーター業務に就く人を在宅オペレーターといいます。以前から仕事と家庭を両立させるワークライフバランスの観点で有用性が注目されていました。

 さらに東日本大震災後には、幅広い地域で交通機関の間引き運転や真夏に向けたオフィスの節電対策といった不測の事態が起き、オフィスへの通勤が不要になる在宅オペレーターの利点が改めて見直されています。コールセンターの拠点だけにオペレーターが集中していると災害時に事業継続が難しくなる可能性もあるため、自宅で働く在宅オペレーターをうまく組み合わせた勤務体系にも関心が集まり出しました。

効果:オフィスへの通勤が不要に

 在宅オペレーターの導入は、技術的にはさほど難しくありません。コールセンターにかかってくる電話を在宅オペレーターがいる自宅に転送したり割り振ったりする機能を持つCTI(コンピュータ-電話統合)ソフトは既に数多く用意されています。一方、在宅オペレーターの自宅にはパソコンとブロードバンド回線があれば十分です。

 ただし、運用面では乗り越えなければならない障壁があることを知っておくべきでしょう。例えば通常のコールセンターには、スーパーバイザーと呼ばれるオペレーターの管理者がいます。オペレーターの仕事ぶりを観察して電話対応のアドバイスを与えるほか、個人情報の漏えいといった問題が起きないように監視する役割を担っています。ところがオペレーターが自宅にいると、スーパーバイザーは直接オペレーターを見られなくなるので、個々人の仕事を把握しづらくなるうえ、機密保持上のリスクも高まります。

事例:深夜帯に人員確保

 テレビ通販大手のジュピターショップチャンネル(東京都中央区)は2004年頃から、「ホームエージェント」と呼ぶ在宅オペレーター制度を導入しています。同社は深夜の生放送で目玉商品を紹介するため、この時間帯にオペレーターを数多く配置する必要があります。そのため、交通機関が動かなくなる深夜帯の人員確保に在宅オペレーターを役立てています。ただしホームエージェントになれるのは、通常のオペレーターとして長年勤務し、仕事や人柄に定評があるベテランに限ります。これによって在宅でも生産性と安全性を確保しているのです。