大規模災害の発生直後に携帯電話やスマートフォン、インターネットを使って、従業員の安否情報を集約したり、初動対応の連絡網を確保したりするシステムのこと。


 企業にとって、大規模災害の発生直後はまず、従業員の安全確保や避難といった初動対応が最も大切になります。次いで経営者や災害対策本部長といった立場の人が全社員に指示を出し、事業継続に向けた行動に移ります。

 そうした際に全ての判断の前提になるのが従業員の安否情報です。本人や家族の状態と居場所、けがの具合、自宅の損壊状況、周辺の環境などを携帯電話やパソコンから入力してもらい、集約するための安否確認システムが広く普及しています。東日本大震災では多くの企業で利用されました。

効果:緊急時の連絡網

 安否確認システムは安否情報を集めるだけではなく、災害発生直後の業務を支援するのに役立ちます。コンピュータや設備などが故障している場合は、復旧のための人員を確保しなければなりませんし、店舗が被災していれば、一時的な閉鎖や応援体制の準備を検討すべきです。こうした情報をかき集め、従業員に伝える緊急連絡網が欠かせません。

 災害時は電話が不通になり、普段運用している電子メールやグループウエアも使えなくなるケースがあります。そこで安否確認システムは、これらとは別系統で用意するのが一般的です。主要な通信事業者や検索サイト、セキュリティー会社などが企業向けの安否確認サービスを提供しており、事前に契約しておけば災害時に利用できます。

 東日本大震災では携帯電話網が被害を受けて通信が不安定になり、一時的には安否確認サービスの利用さえも困難な状態になりました。こうした場合は、通信各社などがネット上に臨時に開設した「災害伝言板」や「消息情報掲示板」のような公共サービスを併用し、連絡網の確保に努めるべきです。

 非常事態のさなかでも従業員と連絡を取り合うには、利用者がシステムに慣れている必要があります。操作方法が分からなかったり、安否情報の入力を促すメールが携帯電話の機種変更などで届かなかったりすれば、いざという時に役立ちません。普段から訓練しておくことが求められます。