個々の人材が持つ能力やキャリア観などを把握し、適材適所の配置を図る施策のこと。職場の生産性向上や人材の能力開発を目的とする。


 経済のグローバル化に伴い、企業の人事施策にも変化が起きています。典型例は日本企業が抱える海外拠点への人材配置で、従来は日本人社員を世界各地に派遣して駐在させるのが一般的でした。しかし最近では、現地の習慣になじんでいる海外の優秀な人材を雇用して対応しようとする企業が増えています。即戦力になるとの判断からです。

 こうしたグローバルでの人事を実行するには、海外拠点を含む全社規模で社員一人ひとりの能力や適正を把握しておく必要があります。そこで先進企業の間で、タレント・マネジメントと呼ばれる施策に注目が集まっています。個々の人材の能力やキャリア観などの情報を見える化し、その情報を参考にして適材適所の人材配置や適切な研修を実施します。主な狙いは3つで、(1)人材の能力を生かす、(2)意欲を引き出す、(3)離職を防ぐです。

効果:優秀な人材の能力と意欲を引き出す

 タレント・マネジメントを実行するため、全社規模で社員の能力や研修履歴などの情報を整理したデータベースを用意する企業が現れています。これを活用して本人の適性やキャリア形成に合った役割を会社が提供することで、社員の能力を引き出し、職場の生産性改善や社員の意欲向上を図っています。

 従来の人事制度は一般に、役職や職務ごとにあるべき姿を描き、その理想像に合わせることを社員に求めてきました。しかし職務内容が社員の適性と合わずに本来の能力を生かせなかったり、個々人が描くキャリア観と一致しないために海外の優秀な人材などが不満を抱いたりする一因になっていました。

 タレント・マネジメントが機能するかどうかは、人材に関する情報をどれだけ詳細に収集し、生かせるかにかかっています。例えば各人材のキャリア観の情報を網羅していないと、適切な役割を用意しても、「目指すキャリアと合わない職務を命じられた」などと社員の不満を招きかねません。もっとも、どの程度の情報を集めれば十分なのかは、先進企業の間でもまだ意見が分かれています。そこで管理する人材情報を柔軟に拡張できるように、機能追加や変更が容易なクラウドサービスで人事データベースを整備する企業も出てきました。