ファブレットは、タブレット端末に近い大画面を持つスマートフォンのこと。「Phone」と「Tablet」を合わせた造語で、「Phablet」とつづる。この言葉は、2012年頃からメディアによく登場するようになった。

 ファブレットの明確な定義は存在しないが、代表格はサムスン電子の「Galaxy Note」とするのは衆目の一致するところ。Galaxy Noteは、5.3インチの液晶画面を持つスマートフォン。海外では2011年9月に発表され、日本ではNTTドコモが2012年4月に発売した。発売当初この画面サイズは、スマートフォンとしては国内最大級だった。それより前に登場した5インチ画面を持つ「Dell Streak」(米デル製、日本ではソフトバンクモバイルが発売)をファブレットの先駆けとする見方もある。ファブレットは概して、5インチ以上の画面を持つスマートフォンを指すと考えればよい。

 ファブレットの機種数は今も増えている。2012年後半には、5.5インチの画面を持つ「Galaxy Note II」が発売。海外では、中国のファーウエイが6.1インチの画面を持つファブレット「Ascend Mate」を発表済みだ。これらに限らず、スマートフォンの最新モデルは5インチ以上の画面を持つものが目立ってきている。

 モバイル端末の動向に詳しいガートナー ジャパン テクノロジ&サービス・プロバイダー コンシューマー・テクノロジ&マーケット・グループの佐藤 篤郎氏は、ファブレットが登場した背景を「スマートフォンは携帯性に優れ、タブレット端末は視認性に優れる。両者のいいところ取りをするべく、Galaxy Noteのような端末が出てきたのではないか」と分析する。また、ハイエンド機の画面を大きくすることでプレミアム感を出す狙いもあるという。

 画面サイズが6インチを超えると、タブレット端末にかなり近付く。タブレット端末の画面サイズは様々だが、最近注目を集めているのは7インチ前後。サイズと重量のバランスが良く、低価格の製品が多い。その7インチのタブレット端末と6インチ以上のファブレットは、画面サイズだけを見ると競合するという見方もできる。

 しかし実際には、そうとも限らないようだ。理由として佐藤氏が挙げるのは、7インチのタブレット端末にはグーグルの「Nexus 7」やアマゾンの「Kindle Fire HD」をはじめとする性能が良く安価な製品があること。ファブレットのメーカーは、タブレット端末と同じ画面サイズの製品を出すにしても、安価なタブレット端末と同じ位置付けと見なされるのを避けるだろうというわけだ。例えばスマートフォンの方が高級だといった形で、別の位置付けの端末として見せ方を変えることが考えられる。

 また、大画面化の傾向が続くかどうかも流動的である。大画面化が進むと、比例して本体サイズが大きくなり「ポケットに入れにくい」「電話をかけにくい」といった課題が鮮明になってくるからだ。

 このように、ファブレットとタブレット端末では、位置付けが異なる。ファブレットの主な利用法はスマートフォンに近く、電話としても使う。つまり1台目の端末であることがほとんど。一方タブレット端末は、電話ができる1台目の端末に加えて2台目として持ち、情報を消費する端末として使うことが多い。