商品の魅力を視覚的に訴えて、来店客の購買意欲を刺激するマーチャンダイジング(商品政策)手法のこと。デジタル機器を使う例が増えている。


 世の中にたくさんの商品があふれ返っている今の時代に、販売店は売り場で目立ち、消費者に関心を持ってもらう陳列や商品ディスプレーにしのぎを削っています。こうしたなか、消費者の足を止め、入店を促し、購買意欲を高める手法として注目を集めているのがVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)です。もともとはマネキンやハンガーなどを使って、商品や店舗の魅力を視覚的に訴える手法を指します。そして最近では、VMDを実現するツールとしてデジタル機器を活用する例が増えています。

 例えば、米アップルのタブレット型端末「iPad」やデジタルサイネージ(電子看板)の利用などがそうです。実際にこうしたデジタル機器を使って商品の訴求力を高めたり、接客時間の短縮につなげたりしている企業が何社も現れ始めています。

効果:見た目が購買行動に直結

 VMDに成功すれば、来店客数を増やせるだけでなく、購買行動につながる比率を高めることができます。具体的には、来店客の視覚に強くアピールするため、3つの手法を駆使するのが一般的です。

 1つ目は商品一つひとつの陳列の工夫です。例えば、ハンガーラックの中心にベージュ系の衣服を置き、ベージュ系と反対の関係にあるブルー系をラックの左右に配置するなど、一定のルールに従って陳列するのが基本になります。2つ目は、売り込みたい商品を何点か取り出し、その商品の魅力を強調して来店客に伝える手法です。いくつかの棚にある複数の商品を組み合わせてマネキンに着せ、来店客に具体的なイメージを持ってもらいます。最後は消費者を売り場に招き入れるため、商品や店舗全体のイメージを高める演出手法です。店舗の正面入り口に流行商品を着飾ったマネキンを配置する施策が代表的です。

 ここに来て、2つ目と3つ目の手法にiPadやデジタルサイネージを用いて、商品や店舗についての動画を流すといった試みが出てきています。

事例:電子看板で“試着”

 iPadやデジタルサイネージといったデジタル機器を巧みに取り込み、一歩先のVMDを実現している企業があります。都内にあるプーマストア原宿は2010年秋から、デジタルサイネージ「インタラクティブミラー」を使った衣服の仮想試着サービスを始めています。来店客はディスプレーの横にあるカメラで全身の写真を撮影。ミラーに自分の画像を映し、気に入った衣服の画像を選択して重ねます。来店客が衣服を着替える手間を省けるだけでなく、店舗全体の先進的なイメージを高めて購買意欲を刺激しています。