ネット上の編集活動。膨大な情報を個人の価値観に基づいて選別・集約し、新たな意味を加えて整理したうえで、多くの人と共有する。求める情報にたどり着きやすくなる。


 チームリーダーを任されることになり、リーダーシップについて学べる本を探そうとインターネットで検索してみたが、上位に来るのは超大手企業の創業者の伝記ばかり。自分と同じ立場の人から評価が高い本を知りたいのだが─。

 ネット上に流布する情報が増えれば増えるほど、自分が欲しい情報にたどり着くのは難しくなっています。こうした問題を解決する手法の1つがキュレーションです。

 もともとは博物館や美術館の展示物を決めたり、展覧会を企画したりすることを指す言葉です。それが個人の価値観に基づいてネットから情報を拾い上げ、それに新たな意味を与えて、多くの人と共有する活動にも使われるようになりました。

 検索エンジンで関連する記事を自動抽出して集約する「アグリゲーション」に対し、キュレーションは人手で情報を収集・整理することが特徴です。

効果:ロングテール需要を掘り起こす

 キュレーションは「編集」と言い換えられます。断片的な情報として存在している時には意識に残らないのに、複数の情報がある視点で束ねられると興味をかき立てられることがよくあります。従来こうした編集行為はマスメディアなどが行ってきましたが、ネットによって誰もが自分の視点で情報を選択し、編集できるようになってきました。

 ビジネスにおけるキュレーションのメリットとして、2011年2月に書籍『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書) を出版したジャーナリストの佐々木俊尚氏は、ロングテールのコンテンツ販売を挙げています。知名度の無いアートや音楽作品も、歴史などの背景情報や他の作品との比較といった情報を交えて編集していくことで、その価値を訴求できるというわけです。

事例:推奨ビジネスに応用

 こうした利点に着目した企業が、リクルートのグループ会社エモーチオ(東京都中央区)です。同社が運営するサイト「bestmania(ベストマニア)」は、投稿者が「お題」を決め、それに最もフィットする音楽CDや映画DVDなどを3つ選びます。お題は「これぞ成功者!!日本を支えた経営者の苦労が書かれたノンフィクションBest3」というように、自分の視点を明確に打ち出します。こうしたお題で読者の興味を引き、コンテンツを販売するサイトに誘引して、アフィリエイト収入を投稿者とエモーチオが折半するというビジネスモデルです。

 米国では特定分野の専門家をキュレーターと位置付け、独自の視点で選び抜いた商品を販売するサイトがあります。利用者はキュレーターをフォローすることで、今まで関心を持っていなかったものに興味の範囲を広げていくのです。

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