タブレット端末やスマートフォンを使ったPOSシステム。既存のPOS端末をタブレットなどと連携させたり、置き換えたりすることで初期投資を抑える。


 クラウドサービス大手である米セールスフォース・ドットコムがモバイルPOS(販売時点情報管理)に熱い視線を送っています。その証拠に2012年7月、米アップルのiPadをPOS端末として使えるサービスを手掛けるベンチャーのユビレジ(東京都渋谷区)と資本提携したと発表しました。出資だけでなく、セールスフォースのクラウド基盤を活用したサービスを提供することも視野に入れています。

 モバイルPOSは、iPadをはじめとしたタブレット端末やスマートフォンを使ったPOSシステムを指します。具体的には、既存のPOSを専用のアプリケーションを載せたタブレットやスマートフォンと連携させたり、置き換えたりします。

効果:月額数千円から

 モバイルPOSの魅力は初期投資や運用コストの安さです。従来のPOSシステムは専用の端末や管理用サーバーを導入したり、通信回線を別に確保したりしなければならず、ハードの価格がかさみがちでした。低価格な機種でも1台数十万円、機能が豊富なものであれば百万円台の初期投資が必要で、特に中小事業者が導入するうえでの大きな壁になっていました。

 それが最近は市販のタブレットやスマートフォンにクラウドを組み合わせたサービスも登場し、月額数千円からといった、中小事業者でも手が届く価格帯の製品が続々と登場しています。ユビレジのようなベンチャー企業だけでなく、NECや富士通、日本NCRといった大手も市場の拡大をにらみ、モバイルPOS商品の投入を急いでいます。

 各社がモバイルPOSに注目する背景には、ビッグデータの盛り上がりもあります。従来のPOSよりモバイルPOSは端末が安価なため、中小事業者もビッグデータの恩恵を受けやすくなっています。

 これまでのように勘や経験に頼るだけでなく、POSを使って蓄積した膨大な販売データを分析、売れ筋などを正しくつかんで次の発注に生かせるわけです。モバイルPOSは単なる端末の置き換えにとどまらず、ビッグデータ活用の範囲を一気に広げる可能性を秘めています。

動向:POSも発注も1台で完結

 富士通は2012年6月、子会社を通じて、量販店向けにモバイル端末をPOSとして使えるシステム製品の販売を始めました。POS機能だけでなく発注もこれ1台でこなせます。

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