DTCP+(プラス)とは、ホームネットワークで地上デジタル放送などの映像を配信する際にコピーを防止するための規格「DTCP-IP」の新機能のことである。このDTCP+に対応した製品が、2013年に続々登場する。

 DTCP-IPは、物理層にIEEE 1394を使ってデジタル放送のコピー制御を行うDTCPを、IPネットワークに適用したもの。DTCP+は、2011年12月に策定されたDTCP-IPバージョン1.4で追加された新機能を指す。このなかで注目を集めているのは、映像配信を視聴できる範囲を屋外に広げるリモートアクセス機能である。DTCP+対応のNASは、この機能を備える。

 DTCPでは、機器間をつなぐIEEE 1394のケーブル長が4.5m、総延長72mという制限があるため、受信端末は事実上屋内でしか使用できない。しかしDTCP-IPでは、IPネットワークにケーブル長などの制限がないため、TTLとRTTを使って視聴できる範囲を家の中(ホームネットワーク)に限定している。TTLは、コンテンツを配信するサーバーから受信端末までに越えられるルーターの数を制限する。またRTTは、パケットが機器間を往復にするのにかかる時間を指す。DTCP-IPでは、TTLを3以下、RTTを7ミリ秒以下に制限している。

 しかし、自宅で録画したテレビ番組を外出先のパソコンやスマートフォンで視聴したい、といったニーズの高まりに応える形で、DTCP+では制限を緩和した。あらかじめ、LAN内で配信するサーバーに受信端末を登録しておけば、TTLとRTTによる制限を受けないようにしたのだ。

 DTCP+では、サーバーと受信端末をどのようにつなぐかという規定はない。例えば受信端末が公衆無線LANを利用する場合、サーバーとNATの配下にある受信端末とつなぐ方法は決められていない。このため、実装するベンダーが「NAT越え」の仕組みを独自に用意する必要がある。