マルチコアファイバーは、光ファイバーの一種。光ファイバーには「コア」と呼ばれる光の通り道があり、このコアがファイバー内に複数あるものがマルチコアファイバーだ。現在普及しているのはコアが1本だけの光ファイバーで、シングルコアファイバーと呼ばれる。複数のコアを使うことで、コアが1本の場合よりも伝送容量を大きくできる。光ファイバーベンダーや通信機器ベンダーは、2020年頃までに海底ケーブルなどでの実現を目指している。

 マルチコアファイバーが登場する背景には、通信の高速化のニーズに対してシングルコアファイバーでは対応できなくなったことがある。古河電気工業の研究開発本部 ファイテルフォトニクス研究所 光線路開発部 光ファイバグループ グループリーダで主査の杉崎 隆一氏は、「1つのコアでなるべく多くのデータを送り出す多重化技術は、今後大幅な高速化は望めず、限界に近い」と説明する。

 多重化技術は、1つの信号に多くのビットを載せて伝送容量を増やすというもの。時分割、波長分割、多値変調といった方法がある。多重化が限界に近い理由はいくつかある。特に大きいのは「ファイバーヒューズ」の問題だ。多重化で信号に載せるビット数を増やすには、コアに入力する光の出力を上げる必要がある。しかし、上げ過ぎるとファイバーヒューズと呼ばれる現象が発生し、光ファイバーが破壊されてしまう。また、光ファイバー以外にも増幅器の性能がネックになっている。

 ケーブル1本当たりの通信速度を高速化するために、シングルコアファイバーを束ねて利用する方法もあるが、マルチコアファイバーに比べてコストが上がる可能性が高い。現段階では、光ファイバー1本に対し増幅器とコネクターが1つずつ必要になるからだ。「マルチコアファイバーであれば、増幅器は1台、コネクターは1つで済む」(杉崎氏)のである。