文・木幡 康幸(NTTデータ経営研究所 ソーシャルイノベーション・コンサルティング本部 シニアコンサルタント)

図1●コンテナ型データセンターのイメージ
図1●コンテナ型データセンターのイメージ
写真はNTTファシリティーズのセルモジュール型データセンター「コンテナタイプ(S)」ニューモデル(2011年10月発売)。標準外形寸法は幅2950mm×奥行き6900mm×高さ3000mm
出典:NTTファシリティーズ

 コンテナ型データセンターとは、トラックなどでの輸送に使用されるコンテナ型のボックスに、データセンターを構成する上で必要な機器を収容したものです。具体的には、サーバーやストレージ、制御機器、冷却・電源装置などが収容されているため、コンテナ自体がデータセンターとして稼働可能であり、野外設置や運搬が可能な新たなデータセンターの形態といえます(図1図2)。

 特に近年は、東日本大震災を契機とした柔軟な経営の必要性やコスト削減圧力の高まりなどから、コンテナ型データセンターへの注目度が高まっています。コンテナ型データセンターは2000年代後半から米国を中心に実用化され、多くの先進的企業で活用されています。一方、日本国内では各種実証実験や一部企業での導入が始まりつつある段階で、今後さらに利用が進むでしょう。

図2●コンテナ型データセンターの設置イメージ
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図2●コンテナ型データセンターの設置イメージ
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図2●コンテナ型データセンターの設置例
写真(左)はインターネットイニシアティブ (IIJ)の松江データセンターパークの全体像。写真(右)は同パークに設置してあるコンテナ型データセンターモジュール 「IZmo(イズモ)」。左奥が外気冷却コンテナユニット
出典:インターネットイニシアティブ

建築基準法の規制緩和が追い風

 これまで日本国内でコンテナ型データセンターの導入が遅れていた理由は、建築基準法による規制があったためです。地方自治体によって様々な解釈があるものの、コンテナ型データセンターを土地に着地させて使用する場合、建築基準法の対象となる「建築物」として見なすという解釈が一般的でした。そのため、確認申請や消防法、道路交通法など様々な制約が課された結果、設置は非常に困難となっていました。例えば、消防法が適用されると、「防火地域(商業地など)」に設置する際には、規模に応じて耐火建築物または準耐火建築物としなければならず、基準を満たすためにコストがかかってしまいます。

 しかし、2011年3月に国土交通省は、「コンテナ型データセンターのうち、稼働時は無人であり、機器の重大な障害発生時等を除いて内部に人が立ち入らないものについては建築物に該当しない」という通知を出しました(国土交通省「コンテナ型データセンターに係る建築基準法の取扱いについて」)。これによってコンテナ型データセンターの導入に関する法的な規制は大幅に緩和され、国内での普及の素地が整いました。

最大のメリットはTCOの削減

 コンテナ型データセンターを活用することで得られる最大のメリットは、初期導入コストと運用コストの削減です。

(1)初期導入コストの削減
 コンテナ型データセンターは、従来のようにビルなどのファシリティを整備した上でラックやサーバーなどを一つひとつ構成していく必要がなく、事前にメーカー側でコンテナ内に必要な機器を構成してユーザー拠点に搬送・設置し、電源やネットワークをつなぐだけでデータセンターを構築することが可能です。そのため、設備費をはじめとして人件費や土地取得費用など初期導入コストが抑えられ、結果として減価償却費や固定資産税の削減にもつながります。

(2)運用コストの削減
 運用コストで大きな比重を占める電力使用量の削減が可能となります。各機器を高集積に配置し管理することによって稼働効率を高め、各機器の電力使用量の最適化を図れるほか、高い冷却効率を実現できます。さらに、高電圧直流電源や太陽光発電パネル、風力発電装置など様々な技術の組み合わせによって、電力使用量の削減に取り組んでいる製品もあります。また、特に冷却については、冷却効率が高い機器配置のほか、外気を活用した空調制御なども行っています。保守運用フローの単純化によって人件費を削減することも可能です。

 以上のような取り組みの成果として、電力・冷却・設備にかかるコストを約50%削減できるような製品も出てきています。