図●OSPFにおけるルーティングテーブルの作り方
図●OSPFにおけるルーティングテーブルの作り方
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 OSPF(Open Shortest Path First)は、ルーターやレイヤー3(L3)スイッチがパケットの転送先を動的に決定するためのルーティングプロトコルの一種である。主に中・大規模ネットワークで使う。

 L3スイッチでOSPFを動作させると、ネットワークの経路情報(LSA)を他のL3スイッチとやり取りし、ネットワーク構成図(トポロジーマップ)を作る。その構成図から最適経路を判断し、パケットの転送情報であるルーティングテーブルを作成する(図)。L3スイッチはこのルーティングテーブルを見てパケットを送る。

 OSPFを使うと、ネットワーク管理者が自在に経路を設定できる。例えば、なるべく処理性能が高いL3スイッチを経由するようにしたり、できるだけ高速回線を通るようにするなど、条件に応じた設定が可能である。さらに、トラフィックを複数の経路に均等に割り振って、ネットワーク全体で負荷を分散させることもできる。ネットワークを複数の「エリア」に分けてルーターの負荷を抑える仕組みもある。

 このように柔軟な経路制御が可能なのは、OSPFでは最適経路を選ぶための指標として「コスト」と呼ばれる値を使うからだ。コストはL3スイッチのインタフェースに設定する値。L3スイッチから目的のネットワークに到達するまでのコスト値を足していき、その合計値が最も小さい経路を最適経路と判断する仕組みである。

 合計コストを考えるときの大切なポイントは、L3スイッチから宛先ネットワークまでの経路を考える際、「L3スイッチの出口となるインタフェースのコスト値を足していく」ということである。逆に、L3スイッチのインタフェースに入るときのコスト値は0(ゼロ)として扱う。

 コスト値はネットワーク管理者が手入力するのが基本である。そうでない場合、回線速度に応じてあらかじめ決められた値がコスト値として割り当てられる。

 例えば高速の回線を優先的に使うようにしたい場合には、その回線のインタフェースに小さいコスト値を設定し、低速の回線には大きなコスト値を設定すればいい。同様にして、処理性能の高いL3スイッチを経由させるような経路制御が実現可能だ。パケットの行きと帰りで異なる経路を流れるようにもできる。ネットワーク全体で流れるパケットを分散することも可能だ。

 特徴的なのは、合計コストが同じ経路が複数存在した場合、複数の経路にパケットを分散して送り出すという点。現用回線と予備回線の組み合わせのようにどちらか一方を使うのではなく、両方の回線を使いたいときに有効である。