AAAA(クアッドエー)フィルターは、IPv6インターネット上のサーバーにつながらなかったり遅延が生じたりする恐れのあるユーザーを救済する手段の一つ。具体的には、「AAAAレコード」をユーザーが受け取らないようフィルタリングする。AAAAレコードとは、サーバーのドメイン名に対応するIPv6アドレスを通知するDNSのレコードのこと。

 この手段が必要とされる背景には、NTT東西のBフレッツまたはフレッツ 光ネクストなどで生じる特殊な環境がある。これらのフレッツ網をアクセス回線としてIPv4インターネットだけに接続している場合、IPv6インターネットに接続できないフレッツ網専用のIPv6アドレスを割り当てられるケースがある。WebサイトのIPv6対応が徐々に進むなか、こうした環境を使っているユーザーはAAAAレコードを受け取ってIPv6インターネットへのアクセスを試み、失敗する可能性がある。

 その対策としてフレッツ網には、TCPのRST(リセット)パケットを送ってIPv6インターネットへの接続要求を無効にする仕組みがある。これにより、多くのアプリケーションはIPv6でのアクセスを断念してIPv4でのアクセスに切り替える。このようにIPv6からIPv4に切り替えることを「IPv6-IPv4フォールバック」という。Webブラウザーがフォールバックに要する時間は、Internet Explorerで1秒以上、FirefoxとChromeで300ミリ秒程度。ただ、「AAAAレコードは複数返ってくるケースがあり、それらを順番に試すうちフォールバックに時間がかかることがある。また何回IPv6アクセスを試すかは、アプリケーションによってまちまちだ。フォールバックしないアプリケーションもある」(NECビッグローブ 基盤システム本部 システム開発グループの川村 聖一主任)。

 AAAAフィルターを使うとIPv4アドレスを通知するAレコードだけ送られるため、IPv4インターネットにしかアクセスしなくなる。AAAAフィルターの実施場所は、主にプロバイダーのキャッシュDNSサーバーとコンテンツ事業者の権威DNSサーバーである。プロバイダーの場合、自社会員にAAAAレコードが返らないようにする。コンテンツ事業者の場合は、プロバイダーのキャッシュDNSサーバーからの問い合わせに対し、AAAAレコードを回答しないようにする。ただし、いずれも実施状況は各社でまちまちだ。

 もっとも、AAAAフィルターは一時的な措置にすぎない。フォールバックによる問題の根本的な解決策は、フレッツ回線でIPv4インターネットだけにつないでいる全ユーザーがIPv6インターネット接続サービスにも加入することだ。