文・今関 雅巳(NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部 シニアコンサルタント)
スマートシティの定義は様々で統一的な見解はありませんが、一般には「ICT・環境技術などの先端技術を用いて社会インフラを効率化・高度化した都市や地域」を指します。
スマートシティは、今後ますます懸念が高まる地球温暖化・エネルギー危機や、新興国における都市化、先進国における少子高齢化などの課題への解決策として期待されています。先進的な取り組みであるため、特例措置や財政補助が必要となりやすく、多くのケースでは国や自治体と連携したプロジェクトとして進められています。現在世界では400以上のプロジェクトが進行中です(図1)。
代表的な3分野の取り組み
スマートシティが対象とする分野は、都市機能・インフラのあらゆる範囲に及びます。以下では、そのうち(1)環境・エネルギー、(2)交通、(3)医療の3分野について、先進事例を交えて示します。
(1)環境・エネルギー分野
世界的に今後さらなる人口増加が見込まれる中で、環境汚染やエネルギー危機は喫緊の課題となっています。この分野の取り組みは、電力の効率的利用・CO2削減への寄与が期待される「スマートグリッド」が中心となっています。ほかにも、例えば廃棄物発電、水漏れ検知の自動化など、様々な取り組みが行われています。
オランダのアムステルダムでは「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」を推進しています。一般家庭への消費電力表示モニターの配布、CO2排出量を削減した商店街、船舶用グリーンエネルギー供給ステーションの設置など、20以上のプロジェクトが進められています。2025年までに1990年比で40%のCO2削減を目標としています。
(2)交通分野
交通渋滞は経済損失、エネルギーの浪費、CO2排出量の増加などを引き起こすため、都市部における重要な課題の一つとなっています。国土交通省によると、日本国内での渋滞による経済損失は貨幣価値に換算すると年間で約12兆円(2002年度)にも上っています。
スウェーデンのストックホルムでは、交通渋滞緩和の対策としてロードプライシング(道路課金)を取り入れています。無線ICタグとカメラを用いて自動車が道路上の特定地点を通過した際に、道路の混雑状況などに応じた料金が課金される仕組みです。この課金システムにより、22%の渋滞削減を達成したと報告されています。
(3)医療分野
先進国の多くは高齢化社会を迎えており、増加する医療費の抑制、高度で効率的な医療環境が求められています。また日本では、地方での医師・看護師、高度医療機器の不足も課題となっています。
埼玉利根保健医療圏医療連携推進協議会が構築・運営する「地域医療ネットワークシステム(愛称とねっと)」は、ICTを利用して医療施設にまたがる診療情報などを共有化し、患者中心の医療を提供可能にしています。これにより、地域の病院と中核病院が役割分担しながら、住民に医療を提供することができ、医療人材・高度医療機器の効率的な活用が可能となります。また住民は医療情報が記録された「かかりつけ医カード」を携帯することにより、とねっと提携病院のどこでも医療情報を参照・登録することができます。