文・宮本 翔(NTTデータ経営研究所 産業コンサルティング本部 コンサルタント)

 「Facebook」とは、インターネット上でユーザー同士のコミュニケーションをサポートする世界最大のソーシャル・ネートワーキング・サービス(SNS)です。サービスは米フェイスブックが提供しており、2012年3月時点で世界9億人のユーザーを抱え、日本国内でもアクティブユーザー数が1000万人を超えるまでに普及が拡大しています。

 Facebookは、2004年に当時、米ハーバード大学の学生であったマーク・ザッカーバーグ氏らによって開発されました。当初は、学内の学生同士の交流を目的としていましたが、その後、全米の大学生に利用対象が拡大され、さらに2006年には一般公開され、2008年には日本語にも対応しました。

 また、Facebookには団体が作成できるビジネス用のページ「Facebookページ」があり、現在では個人の間だけでなく、企業や自治体でも、広報・宣伝などを目的に幅広く活用されています。

実名登録や「いいね!」ボタンによる情報の共有・拡散が特徴

 Facebookでは、一般的なSNSと同様に、ユーザーAがユーザーBとつながりを持つためには、ユーザーAがユーザーBに対して「友達申請」を行い、ユーザーBがその申請を「承認」する必要があります。これらのプロセスを経て、ユーザーA、ユーザーBのそれぞれのアカウントの友達リストに、それぞれが加わる仕組みです。つながりのあるユーザーに対しては、情報の配信やメッセージの送信、画像の共有、イベント案内・出欠管理などを行うことができます。

 では、ほかの一般的なSNSとFacebookとの違いはどこにあるのでしょうか。Facebookの主な特徴として、次の点が挙げられます。

(1)実名登録制
 Facebookでは、実名でのユーザー登録を前提としており、実際多くのユーザーが顔写真や詳細なプロフィールを掲載しています。これは、Facebookを現実世界の延長上に位置づけ、実社会と同様の人間関係をインターネット上に構築するというコンセプトに基づいています。一方、個人情報をインターネット上に公開することに対する懸念を持つユーザーも少なくありませんが、プロフィールや発信する内容ごとに公開範囲を限定できるなど、プライバシー管理が可能な仕組みになっています。

(2)高精度な友人検索機能
 上述の実名登録制により、ユーザーが友人を容易に検索できることもFacebookの特徴の一つです。さらに、登録した情報などから、実社会でもつながりのある可能性の高いユーザーを自動的に抽出し、「知り合いかも?」と表示することで友人の検索をサポートする機能を提供しています。これらにより、Facebook上でより実社会に近いコミュニティを形成できるようになっています。

(3)「いいね!」ボタンなどを通じた効率的・効果的な情報発信
 ユーザーは、配信された情報などを確認し、共感した場合などに「いいね!」ボタンや「シェア」ボタン、あるいはコメント機能を通じて、友人とその情報をFacebook上で共有できます。また、企業や自治体は、これらの機能をWebサイト上に組み込めるようになっています。例えば、企業が自社商品を宣伝するWebページに「いいね!」ボタンを組み込み、ユーザーがWebサイト上に組み込まれた「いいね!」ボタンを押すことで、Facebook上の友人にその情報が共有されます。

 これらの機能により、1人のユーザーの共感から、その情報がつながりのあるユーザーに次々と伝わり、企業や自治体はより多くのユーザーに情報を届けることが可能です。また、実社会でつながりのある友人からの配信であるために、共感しやすい、つまり有益な情報であるとユーザーが判断する可能性が高まることも見込まれます。

(4)多様なカスタマイズに対応
 Facebookには、既に多くの機能が搭載されていますが、アプリケーションを取り込むことで、さらに多様にカスタマイズできます。例えば、動画配信の「Youtube」を組み込んでFacebook上に動画を掲載したり、アンケート機能を追加したり、またキャンペーン用にゲームや懸賞機能を取り入れたりするなど、目的に応じて様々なカスタマイズが可能です。そのためFacebookは、ユーザー同士や企業・自治体などの間で、単に情報やメッセージのやりとりだけでなく、より多彩なコミュニケーションが行われる場となっています。