プラチナバンドとは、700M~900MHzの周波数帯のこと。携帯電話では、この周波数帯の電波が最もつながりやすく、貴重な帯域であるため、こうした名称で呼ばれている。

 海外も含めると、携帯電話向けには主に400M~2.6GHzの電波が使われている。このうち、700M~900MHzの電波は他の周波数帯に比べ、「減衰が少ないため遠くまで届く」「建物の陰にも電波が届く」という携帯電話に適した特徴を備えている。

 電波の特性は周波数によって決まるが、周波数が低すぎても高すぎても携帯電話には使いにくい。電波伝搬特性を考えると、一般的には500M~1GHzの周波数帯が携帯電話システムに使いやすいといわれている。この周波数帯は、(1)電波が飛びやすい、(2)送受信機の部品が作りやすい─という特徴があるためだ。

 電波の飛び方は、電波の波長と関係がある。周波数と波長は反比例の関係にあり、周波数が低いほど波長は長く、周波数が高いほど波長は短くなる。波長が長いと、電波の通り道に障害物があっても、障害物を回り込んで後ろにも届く。このような電波の性質を「回折」という。回折によってビル陰にも電波が届くため、ビルが多い都心でも携帯電話はつながりやすくなる。これに対し、波長が短い電波は、まっすぐに進む「直進性」が強くなり、建物を回り込まないためビル陰などにいると電波が届かなくなる。

 とはいえ、波長が長ければよいというわけでもない。波長が長いと屋内に電波が届きにくくなるためだ。電波は、窓を通して建物に入ってくる。このとき波長が窓枠よりも長いと、電波が建物内に入りにくくなってしまう。

 送受信機の部品についても、高い周波数と低い周波数のそれぞれで難しさがある。高い周波数になるほど、部品を小さくしなければならなくなるため、作りにくくなる。また、基板上の他の部品の影響を受けやすくなるので、設計が難しくなる。一方、低い周波数になると、特定の周波数だけを分離する「フィルター」と呼ぶ部品のサイズが大きくなってしまう。このように携帯電話の大きさに合った部品を安いコストで作るには、500M~1GHz程度の周波数帯が適している。