文・小酒井 一稔(NTTデータ経営研究所 ソーシャルイノベーション・コンサルティング本部 コンサルタント)

 ミラーサイトとは、Webサーバー全体あるいは一部分を「複製」として保持するWebサイトのことです。元となるWebサーバーの情報を複製して持つことを、ミラー(鏡)が物を映すことにたとえて、このような呼び名になっています。

 ミラーサイトを構築する場合は、元となるサーバーの情報を、ミラーサイト側に反映するために、同期処理が必要となります。同期処理を実施しないと、常に最新の情報を提供することができません。同期の間隔は、サイトの性質によって異なりますが、ソフトウエアのダウンロードサイトの場合は1時間から1日に1回程度の場合が多いようです。

 ミラーリングのポリシーとして、同期間隔の推奨値を掲載しているサイトもあります。また、同期処理を実施するタイミングを考慮し、本家のサイトにかかる負荷を抑える必要があります。

目的はアクセスの高速化とサーバー負荷の分散

 ミラーサイトを構築する一般的な狙いは、サーバーを地理的にユーザーに近いところに配置する、つまりユーザーとサーバーとの間の物理的な距離を近づけることで、アクセスの高速化を図ることです。

 これはソフトウエアのダウンロードサイトに多く見られる使い方です。距離が近くなることに加えて、途中で経由するルーターなどの機器を少なくすることによって、途中経路の混雑などの影響を受けにくくなるため、高速かつ安定したダウンロードが可能となります。

 ユーザーがミラーサイトを利用する際は、地理的に近いところを選択するのが一般的ですが、応答が速いミラーサイトを自動的に選択してくれるダウンロードツールを利用することもできます。

 一方、Webサーバーの内容を複製するという点に着目した応用例として、アクセスが集中するWebサイトの負荷を分散したり、障害が発生した場合に切り替えるためのバックアップサイトとして使ったりする事例もあります。東日本大震災をきっかけに、官公庁や自治体ではこうした使い方への関心が高まっています。

災害対策としての負荷分散とバックアップ

 Webサイトへのアクセスが遅延するケースとして、通信帯域の不足に起因する問題と、サーバーの処理能力の限界に起因する問題が考えられます。このうちサーバーの処理能力に起因するアクセスの遅延に対しては、ミラーサイトを構築して処理を分散することによって、問題を解決できます。

 ミラーサイトには通常、元のWebサイトのURL(uniform resource locator)とは異なるURLが設定されます。ただし、負荷分散装置(ロードバランサ)と組み合わせることにより、アクセスするサーバーのURLをユーザーに意識させる必要がなくなります(図1)。

図1●ミラーサイトを利用した負荷分散の例
図1●ミラーサイトを利用した負荷分散の例
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 ミラーサイトを構築することにより、いずれかのサーバーが故障した場合でも、その他のサーバーでサービスを継続することができます。これは、ミラーサイトをバックアップ用途として利用しているとも言えます。

図2●広域負荷分散の例
図2●広域負荷分散の例
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 最近では、専用の負荷分散装置を利用して、遠隔地のデータセンターに処理を振り分ける「広域負荷分散サービス」も登場しています。例えば、関東圏と関西圏など、物理的に離れたロケーションにミラーサイトを構築し、処理を振り分けることができます(図2)。広域災害への対策としても有効なサービスと言えるでしょう。