ハイブリッドクラウドとは、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたシステムを指す。プライベートクラウドは、自社のハードウエアを集約して仮想化環境を構築し、部署単位、ユーザー単位で必要なITリソースを割り当てるシステム。パブリッククラウドは、インターネットを通じてITリソースを提供するAmazon EC 2 などのサービスを指す。

図 ハイブリッドクラウドの例
図 ハイブリッドクラウドの例
ここでは米ヴイエムウェアの例を示した。仮想マシンの処理内容や各仮想化環境を作り出すシステムの負荷やコストに応じて、適切な場所で仮想マシンを稼働できるシステムを指す。
[画像のクリックで拡大表示]

 最近では、ハイブリッドクラウドをより広い意味で使うようになっている。例えば、仮想化ソフトベンダーの米ヴイエムウェアは、自社システムの仮想化環境で稼働する仮想マシン(VM)を、パブリッククラウドや社外のデータセンター、別の拠点にある仮想化環境などに、自由に移行できるシステムを指している(図)。「パブリッククラウド同士、もしくは自社で運用するデータセンター間でVMを移行できるような環境も含める」という。またマイクロソフトのように、「自社で構築したシステムと外部のシステム、もしくは複数のデータセンターにおいて、シームレスに連携させた柔軟なシステムを指す。必ずしも仮想化環境は必要ではない」というベンダーもある。

 ハイブリッドクラウドでVMを自由に移動できるようになると、コストを抑えつつ、ニーズに合ったシステムを構築できる。例えば、セキュリティを重視するVMはプライベートクラウドやセキュアを売りにしたパブリッククラウドで動かし、そうでないVMはコストの安いクラウドで動かす。また、北米地域の事業所やユーザーに対するサービスを提供するVMは、ネットワークの遅延などを低減しやすい北米にデータセンターがあるクラウドを選択するといったことが可能になる。

 このようなハイブリッドクラウドの構築で重要なのは、「VMを移行させたとき、移行先でも業務で使えるレべルでVMを稼働できるかどうかだ」(ヴイエムウェア)。そこで同社は、ハイブリッドクラウドに加える仮想化環境は、次の条件を満たすべきだとしている。(1)VMの稼働に必要なITリソースを即座に割り当てられる(アジリティー)、(2)情報の機密性を保てる(セキュリティ)、(3)離れた場所にあるシステム間でVMを行き来できる(ポータビリティー)――の三つである。

 ヴイエムウェアでは、同社の仮想化ソフトを利用したクラウドを「VMware vCloud」と呼び、複数の認定プログラムを行っている。例えば、「vCloud Datacenter Services」の認定を受けたサービスであれば、ヴイエムウェアの仮想化ソフトを使って自社で構築した仮想化環境で動くVMを移行できる。国内では2011年にソフトバンクテレコムが認定を受けた。2012年以降も認定事業者は増える見込みだ。